2004 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトマター系の非線形動力学の統一的理解とそれによる生体機能発現機構の解明
Project/Area Number |
04J10039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粟津 暁紀 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ソフトマター / 反応拡散系 / 応力伝達 |
Research Abstract |
本研究は、様々な生物の様々な部位で様々な形で実現している、情報やエネルギーの伝達、増幅、変換、記憶(蓄積)といった、様々な生体機能の発現メカニズムを、ソフトマター系の非線形動力学、化学反応動力学の理解を通じて解明する事を目的としている。 そこで本年度は、その基礎的な研究として、特に化学反応性と拡散による構造形成、および柔らかい物質系の実現する、エネルギーの伝達性に着目し、以下のような研究成果を得た。 生物の発生過程における濃度不均一性や、生体内での強い揺らぎに対する非平衡状態の維持は、如何にして可能になっているのか。その理解に向けたFirst stepとして、「非平衡状態に置かれた反応拡散系が形成する散逸構造は、その非平衡性に対し如何なる影響を及ぼすのか。」という問いをたて、孤立した化学反応系の、系に過渡的に形成された構造に依存した物性の変化、特に緩和の性質について議論した。そして系の構成が同一であっても、Turingパターンを形成した場合は、しない場合より平衡への緩和が格段に遅くなり、パターン形成が非平衡性の維持に働く事を見出した(PRL 2004)。 細胞やタンパク質等といった柔らかい物質から構成される生体機械が、マクロな硬い材質の機械と比べ、どのような動作(運動)特性の違いがあり、またどのような機能が可能(不可能)であるのか。そこで、変形可能なモデル歯車の結合系を構成し、歯車の硬さを変えつつ、歯車一つにトルクをかけ、系の応答を調べた。そして柔らかい歯車系では、硬い歯車系とは逆に、フラストレーションが存在することで回転が伝達すること、また系に温度差を与えた場合、方向性のある運動を実現することを見出した。(論文投稿中)
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