2005 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトマター系の非線形動力学の統一的理解とそれによる生体機能発現機構の解明
Project/Area Number |
04J10039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粟津 暁紀 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ソフトマター / 分子機械 / レオロジー |
Research Abstract |
本研究は、様々な生物の様々な部位で様々な形で実現している、情報やエネルギーの伝達、増幅、変換、記憶(蓄積)といった、様々な生体機能の実現メカニズムを、ソフトマター系の動力学、化学反応動力学の理解を通じて解明する事を目的としている。 そこで本年度は、個々の生体機械、及びその集団系の持つ力学的側面の解明に向け、簡単な格子ガスモデルの提案、及び解析を行い、以下のような成果を得た。 生体内の分子機械は、その存在する環境の大きな揺らぎの影響や、その材料の特徴により、我々の良く知るマクロな機械と異なる原理で、動作している可能性が示唆されている。そこでまず、イオンポンプや分子モーターといった、能動輸送を行う分子機械の動作について、揺らぎの影響が考慮された格子ガスモデルを用い、議論した。そして、入力の違いに応じた輸送方向の切り替えが、環境揺らぎの助けを借りて実現する可能性を見出した。またこれから、バクテリアの鞭毛回転モーターの反転機構等に対し、考察を与えた。(JPSJ2005) 多くの細胞は自律的に運動する。この運動は、微小管やアクチンフィラメント等といった内部の紐状(管状)の構造や、脂質からなる膜等の、流動化や組織化を通じて起こる。よって、その性質の理解には、高分子、コロイド系といったソフトマター系のレオロジーの諸性質の理解が不可欠である。そこで簡単な格子ガスモデルを用い、ソフトマター系の普遍的性質であるShear Thinning、及び、個別的性質であるShear Thickeningについて議論した。そして相空間の構造と拡散の特徴から、これら二つの出現が説明される事を明らかにした。(論文投稿中)
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