2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松澤 孝紀 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地震 / 摩擦熱 / 融解 / シュードタキライト / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
地震時に発生する摩擦熱が地震の動的すべり過程に与える影響の問題のうち、とりわけ岩石の融解と地震すべりの相互作用を明らかにすることを目指した。本年度は新たな摩擦のモデルを構築し、数値計算によるシミュレーションを行った。摩擦モデルの構築においては、高速摩擦すべり実験の観察結果に基づいて、すべりの開始から、摩擦融解の開始を経て完全な融解層の形成に至るまでの摩擦をそれぞれの物理プロセスを考慮してモデル化した。このモデルによって、岩石実験において融解が開始し融解物(メルト)のパッチが開始した付近での摩擦力の上昇や、完全に融解層が形成された後の応力の減少を再現することができるようになった。 構築された摩擦モデルを実際の地震における妥当な条件下でのすべりの問題に適用し、1次元および2次元の弾性体において、地震すべりの挙動の数値シミュレーションを行った。シミュレーションでは、まず、メルトパッチの生成に伴う摩擦力の上昇により、すべりが抑制される挙動が実現された。さらに、高い摩擦レベルにおいてもすべりが継続し、断層面に熱の供給が持続する場合には、摩擦物質によって完全に断層面が覆われ、大きな摩擦力の低下が生じる挙動も実現された。本課題の研究によってこれらの挙動が実際の地震におけるパラメター内で十分おこりうることが示された。また、2次元弾性体における場合には、破壊伝播速度自体との相互作用がおこりうることも示された。今後は、実際の断層運動で融解した岩石(シュードタキライト)との比較等を加え、さらに現実的なモデルへの修正を加えていく必要がある。 この研究による成果は、地球惑星科学関連学会2004年合同大会、日本地震学会2004年秋季大会、および米国地球物理学連合2004年秋季大会において発表された。現在、雑誌論文への投稿を行うために原稿を執筆中である。
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