2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松澤 孝紀 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地震すべり / シュードタキライト / 融解現象 / melt lubrication / メルトパッチ / flash melting |
Research Abstract |
地震すべりに伴う摩擦熱が引き起こす物理現象のうち,天然においてもシュードタキライトとして見られる岩石の融解過程が,どのような摩擦挙動を断層面で示すかについて数値的に研究した.昨年度構築した,融解層の形成から成長までを表現する巨視的モデルについて,本年度は方程式系の無次元化を行い,計算結果の整理を試みた.これにより,多くのパラメターからなっていたモデルは6つの無次元数のみで議論することができた.様々な無次元数について数値計算を行った結果,融解層の粘性発熱レートと熱拡散によって規定される無次元数が,融解後の漸近的挙動を強く支配していることが明らかになった.融解層の厚さは時間の平方根で漸近的に成長し,厚さで規格化した温度場は一定の関数形に近づいた.さらに,融解前の摩擦力による発熱レートと熱拡散から規定される無次元数を加え,二つの無次元数を変化させた場合,摩擦挙動は次の三つの領域に分かれることが示された.融解層の形成付近において摩擦力の増加を示さない領域,融解層の形成によって摩擦力は一時的に上昇するものの,温度上昇による粘性率の減少が摩擦力を大きく低下させる領域,融解層の形成による摩擦力の上昇に比べて温度上昇に起因する摩擦力の低下が小さい領域である.このように,無次元化を行った数値計算から,融解層の成長と摩擦挙動についてのより一般的な議論が可能となった. また一方で,融解層が生成時の微視的過程を考察するため,アスペリティーでのflash meltingによる局所的な融解と熱拡散による冷却過程を考慮した微視的モデルを構築した.このモデルについての数値計算から,潜熱が融解層の形成時間を決める重要な要因であることが得られた.今後微視的なモデルの結果を先の巨視的なモデルに取り込むことで,融解層の形成と成長をより現実的にシミュレーションしていくことが重要である.
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