2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ成型された材料の添加により誘起される液晶機能の評価
Project/Area Number |
04J10240
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
波多野 吏 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カラムナー液晶 / イオン伝導 / 光スイッチング / キュービック液晶 / アゾベンゼン / 水素結合 |
Research Abstract |
金ナノ粒子等の金属ナノ材料を溶解しうる液晶材料の開発のため、金属錯化部位を有する液晶の開発を試みた。錯化部位としてトリフェニルホスフィンオキシド部位を組み込んだ新規液晶の合成を行った。この液晶は室温でカラムナー相を示し、トリフェニルホスフィンオキシド部位がディスク状液晶の骨格として有用であることを示した。さらに、金属錯化能を検討するために、リチウムトリフラートを液晶相に混入した。その結果、ある一定濃度のリチウムトリフラート添加下で、トリフェニルホスフィンオキシド液晶はカラムナー液晶からキュービック液晶に転移することを見出した。リチウムイオンの周りをトリフェニルホスフィンオキシド液晶が取り囲んだミセル構造を形成することで、液晶相がキュービック相に変化したものと考えられる。また、このキュービック相は温度を低下させることで、カラムナー相へと可逆的に変化する。このため、熱によるリチウムイオン伝導のスイッチングが可能な材料として期待できる。 一方、トリフェニルホスフィンオキシド部位は水素結合のアクセプターとして知られている。リチウムイオン伝導を熱以外の刺激でスイッチングするために、フェノール基を有するアゾベンゼンを液晶相に添加した。フェノール基を導入していないアゾベンゼンの添加では液晶相の不安定化が起こったのに対し、フェノール基を導入したアゾベンゼンでは液晶相の不安定化は起こらなかった。このことから、水素結合した複合体が液晶相を示しているものと考えられる。この液晶に紫外光を照射したところ、アゾベンゼンの異性化が確認された。その結果、カラムナー液晶に特有のテクスチャーに欠陥が生じ、液晶相が不安定化した。アゾベンゼンの異性化によりトリフェニルホスフィンオキシド液晶のスタッキングが乱されたものと考えられる。この結果より光によるイオン伝導のスイッチングが可能になると期待される。
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