2004 Fiscal Year Annual Research Report
パーリ仏教の思想的展開--経典註釈書の文献学的文析と思想史的位置づけ--
Project/Area Number |
04J10431
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 紀寿 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | パーリ経典註釈書 / パーリ仏教 / 阿含経 / 二十二根 / 相応アーガマ / 部派仏教 / パーリ文献の編纂順序 |
Research Abstract |
本研究は、スリランカ及び東南アジアに広がるパーリ仏教が伝える経典註釈書(アッタカター)の思想史的位置を解明することを目的とし、経典註釈書の、(1)パーリ文献内部における思想史的位置と、(2)部派仏教全体の中における思想史的位置との二つの観点から調査・研究した。 (1)パーリ文献内部における思想史的位置:パーリ経典から経典註釈書に到る過程での思想的展開を分析するためには、思想的に重要な用語に着目し、文献の成立順序に沿って、その意味内容の変遷を調査する必要がある。この研究方法の基礎作業となるのは、「パーリ聖典の編纂順序」を明らかにすることである。本研究は、パーリ経典註釈書の分析を通して、パーリ文献の編纂順序を解明した(研究発表(1)(3)(4))。この結論によって、今後、パーリ文献内部における思想的変遷を一定程度の客観性を維持しながら解明することができるようになった。 (2)部派仏教における思想史的位置:パーリ経典註釈書の思想史的位置を他部派の観点から検証するためには、パーリ文献とは別系統の伝承とパーリ経典註釈書とを比較する必要がある。パーリ経典と起源を共有しつつも、インドからスリランカに伝えられたパーリ経典とは異なり、インド本土で伝承され中国で漢訳された北伝阿含経は、パーリ文献との比較対象として資料的価値の高い文献である。本研究は、すでに、仏教思想史上、重要な概念である「二十二根」を説く経典を、北伝阿含の一つ、『雑阿含(相応アーガマ)』に同定し、北伝阿含とパーリ文献における「二十二根」説を比較することによって、両者の思想史的位置を明らかにした。今後、同様の方法によって、パーリ文献と漢訳阿含の関係をさらに明らかにし、最終的にインド仏教思想史におけるパーリ仏教の位置を解明することができると考えている。
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Research Products
(3 results)