2004 Fiscal Year Annual Research Report
白亜紀黒色頁岩堆積物の高解像度分析にもとづく海洋無酸素イベントの古環境復元
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04J10902
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 潤一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 白亜紀 / 海洋無酸素イベント / 黒色頁岩 / 有機炭素同位体組成 / 鉛同位体組成 / CO_2脱ガス / 洪水玄武岩 |
Research Abstract |
中生代白亜紀に有機質堆積物(黒色頁岩)が広く海洋底に堆積し、汎世界的に海洋に無酸素水塊が出現したとされる「海洋無酸素イベント(OAE)」について、その成因と詳細な古環境の変動を復元するというのが本研究の目的であった。Cenomanian/Turonian境界(OAE-2)に堆積したイタリアのBonarelli黒色頁岩に注目し、連続サンプリングと超高解像度地球化学分析をおこなった。まず有機炭素の同位体組成を1.5mm間隔で測定し、これをもとに海洋環境の変遷について考察をおこなった。その結果、Bonarelli黒色頁岩の基底部に炭素同位体比の負のスパイクが存在することが明らかになった。この負のスパイクは、さまざまなバイオマーカーにも同様に記録されており、海洋の溶存無機炭素同位体比が変動したことを示唆している。海洋溶存無機炭素の同位体の負のシフトは非常に炭素同位体比の軽いメタンが海洋に供給されるか、火山性CO_2が大量に脱ガスされるかのいずれかが考えられる。特に後者はOAE-2の時期がカリブ海やマダガスカルの洪水玄武岩の形成時期に近いことから関連が示唆されてきたが、関連を示す直接的証拠は得られていない。そこで、鉛同位体比をもちいたアルミノ珪酸塩鉱物の供給源の変遷に関する考察をおこなった。鉛同位体比はアルミノ珪酸塩鉱物の結晶格子中に含まれる鉛の同位体比を反映していると解釈している。興味深い結果として、鉛同位体比がBonarelli黒色頁岩の基底部、炭素同位体比の負のシフトの層準で有意にシフトし、先述の洪水玄武岩の鉛同位体比の方向にシフトしている。このことは、黒色頁岩の堆積開始時に火山由来のアルミノ珪酸塩鉱物の供給が増加し、同時にCO_2が大量に放出されたことを示唆している。OAEが火山活動に関連している可能性を初めて示すことができた。 これらの成果は、第8回国際古海洋会議や日本地質学会第111年大会において発表した。また、この成果の一部を記した論文がGeochimica et Cosmochimica Acta誌の69巻(2005年3月15日号)に掲載された。
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Research Products
(1 results)