2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J11235
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
竹井 成和 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 視覚的注意 / 時間特性 / 外因的注意 |
Research Abstract |
知覚の形成には視覚的注意が関わっているとされる。本研究ではその視覚的注意の誘導要因を検討し、知覚形成に関する時間特性を調べた。注意の誘導モデルとして、ボトムアップでの競合の結果形成される顕著性マップを元に注意が誘導されると考えられている。この顕著性マップに関しては、情報処理過程において複数のマップが存在すると考えられている(初期視覚系における競合のみによって形成されるマップや、より高次処理を経て、行動および認知に関連するマップなど)。本研究では注意の誘導がどの段階のマップを元に為されるのかを検討した。空間的注意の研究パラダイムの一つ、先行手がかり法のうち、目標刺激位置近傍に先行手がかりを提示し、刺激駆動的に注意を誘導すると考えられる周辺手がかりを用いて実験を行った。先行手がかりとして特定の空間周波数成分を持つガボール刺激を用い、この空間周波数を操作することにより初期視覚系におけるマップの形成に要する時間を操作した。初期視覚系におけるニューロンの反応特性として、高空間周波数に対する反応が時間的に遅れることが知られている(約10ms)。このことから、高空間周波数刺激を手がかりとして用いた場合、初期視覚系における顕著性マップの形成が遅れることが考えられる。先行手がかりと方位弁別課題を行う刺激との時間間隔を操作し、視覚的注意の時間特性を比較した結果、高空間周波数手がかりでは低空間周波数手がかりに比べ、手がかり効果のピークが100msほど遅れることがわかった。この結果は、視覚的注意の誘導は初期視覚系における顕著性マップではなく、より高次処理を経たマップによって起こることが示唆される。今後、この手がかり効果の遅れが具体的にどの段階のマップを反映しているのか、手がかりの知覚とどのように関連しているのかを検討することにより、注意誘導のメカニズムを明らかにすることができると考えられる。
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