2004 Fiscal Year Annual Research Report
自己排除高分子界面の統計力学および界面の非平衡ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
04J11331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒沼 慎太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ランダムグラフ / マイノリティゲーム / 確率過程 / 学習 |
Research Abstract |
血管などのように流体媒質中のフレキシブルな境界面という構造は自然界において普遍的な存在である。境界面と流体媒質が相互作用しあって多彩なダイナミクスを織り成している。また、自己交差しない界面という対象自体も理論的に興味深い。界面の種々の性質と自己排除相互作用を完全に取り込んだ統計力学理論は完成されておらず、大いに研究の余地がある。このような観点から自己排除相互作用を取り入れた界面の統計力学の完成を目指し、これに関連する考察を行ってきた。 本年度は、界面構造に関する考察の一環として、ネットワークの統計物理学に注目した。構成要素が複雑にリンクしあったネットワークは、内部構造を持った膜・界面構造とみなせる。自然界・社会におけるネットワーク構造に関する理論的考察のひとつとして、マイノリティゲームに関する知識を界面統計力学に応用できないかを考えた。マイノリティゲームは多数決意思決定のモデル化で、環境依存的な相互作用の元での非平衡学習過程として注目されている。各プレイヤーが少数派に属することを指導原理とする繰り返しゲームなのであるが、少数派志向を物質的な見方で言うならば、構成要素間に凝集・交差を嫌うという性質が与えられているということにほかならない。界面内部構造にあたるプレイヤー間の相互作用の有無をグラフとして表現出来ることに注目し、指数分布に従うランダムグラフ上におけるバッチ学習型マイノリティゲームについて生成汎関数法による解析的評価を行った。その結果、熱力学極限においてはガウス雑音下でのある有効一体確率過程に帰着出来ることがわかった。これについては日本物理学会で報告を行ったが(日本物理学会2004年秋季大会14aPS-49、青森大学)、詳細に更なる検討の余地があり、本年度中の論文発表に至れなかった。次年度以降に研究を継続する。
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