2005 Fiscal Year Annual Research Report
自己排除高分子界面の統計力学および界面の非平衡ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
04J11331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒沼 慎太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 学習 / マイノリティゲーム / 確率過程 |
Research Abstract |
血管などのように流体媒質中のフレキシブルな境界面という構造は自然界において普遍的な存在である。境界面と流体媒質が相互作用しあって多彩なダイナミクスを織り成している。また、自己交差しない界面という対象自体も理論的に興味深い。界面の種々の性質と自己排除相互作用を完全に取り込んだ統計力学理論は完成されておらず、大いに研究の余地がある。このような観点から自己排除相互作用を取り入れた界面の統計力学の完成を目指し、これに関連する考察を行ってきた。 本年度は、界面構造に関する考察の一環として、ネットワークの統計物理学に注目した。構成要素が複雑にリンクしあったネットワークは、内部構造を持った膜・界面構造とみなせる。自然界・社会におけるネットワーク構造に関する理論的考察のひとつとして、マイノリティゲームに関する知識を界面統計力学に応用できないかを考えた。マイノリティゲームは多数決意思決定のモデル化で、環境依存的な相互作用の元での非平衡学習過程として注目されている。各プレイヤーが少数派に属することを指導原理とする繰り返しゲームなのであるが、少数派志向を物質的な見方で言うならば、構成要素間に凝集・交差を嫌うという性質が与えられているということにほかならない。マイノリティゲームの多次元空間での拡張を試み、系がただひとつのパラメタを含む簡約化された定式化に帰着可能であることを示した。また、プレイヤーの従う確率分布が非対称な場合を考えた。待ち時間の確率分布としてよく知られた片側分布であるErlang分布に従う場合を考察した。生成汎関数から出発して、熱力学極限においてあるGauss雑音のもとでの一体の確率過程に帰着されることを示し、その定常状態の存在可能性を議論した。その結果、この非対称分布のもとでは自己無撞着な定常状態が存在しないことを導いた。現在論文公表にむけて執筆中である。
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