Research Abstract |
土砂供給という点で大規模かつ間欠的な,第四紀成層火山における大規模な火山イベントが与える,平野部を主とした流域の地形形成への影響把握を目的とし,各種調査を行った.約2.4万年前に大規模山体崩壊を発生させた浅間火山とこれを含む流域を対象地とし,とくに中之条盆地をはじめとする利根川・吾妻川流域において,各堆積盆の地形・地質を記載し,地形発達史を編年した.各種堆積物を対比するため,現地調査に加え,室内にて堆積物の粒度分析・元素組成分析などを適用した. 中之条盆地においては,後期更新世以降の地形発達史を復元し,約2.4万年前に発生した浅間火山の大規模山体崩壊に由来する「中之条泥流」の流下・堆積過程と,それによる地形変化を検討した.その結果,中之条泥流は,既存の堆積段丘面にのりあげて中之条面を形成した後,完新世に至るまで河床変動をコントロールしてきたことが解明された.関東平野北西部においても,浅間火山の大規模山体崩壊に由来する「前橋泥流(中之条泥流と同一)」と,約1.1万年前に達した「井野川泥流」の堆積によって,複数回の大規模な河道変遷が引き起こされ,ひいては当該地域の地形発達が長期的に規定されてきたことが明らかとなった.また,両地域の中間地点に位置し,吾妻川が利根川に合流する群馬県子持村付近において,支流起源の大規模土砂供給に対する本流の応答過程を発達史地形学の観点から検討した.その結果,本地域に達した「前橋泥流」堆積物は速やかに利根川に侵食されていったものの,最終氷期最盛期前後には泥流堆積物が再堆積するなどして,下流側において谷埋めが生じたことがわかった.すなわち,最終氷期最盛期以降の利根川本流の河床変動が,少なくとも完新世に至るまで,泥流イベントの影響を受けていたことが認められた(吉田ほか,投稿中).
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