2006 Fiscal Year Annual Research Report
マルコフ連鎖を用いた組合せ的対象のランダム生成法および数え上げ
Project/Area Number |
04J11479
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
来嶋 秀治 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 近似サンプリング法 / 完璧サンプリング法 / 持ち行列ネットワーク / 多項式時間乱択近似解法 / 多変量離散分布 / コーダルグラフ |
Research Abstract |
多変量離散分布に対する効率的なランダムサンプリング法の開発に従事した.詳細には高次元単体中の整数格子点上に定義された分布に対して,分布を記述する関数が交互不等式と呼ばれる不等式を満たす場合について,マルコフ連鎖を用いた効率的なランダムサンプリング法を設計した.特に,これまで扱っていた対数分離型の分布の結果を発展させ,一般の分布に対する交互不等式を与え,提案手法の適用範囲を拡張した.この成果をBCMPネットワークに応用した. BCMPネットワークはジャクソンネットワークを一般化した待ち行列ネットワークモデルである.BCMPネットワークはネットワーク中のジョブの均衡分布として積形式解を持つことが知られている.積形式解の正規化定数から,平均滞在客数,平均滞在時間,スループットなどのネットワークの重要な指標を計算することができる.我々は,BCMPネットワークの積形式解が交互不等式を満たすことを示し,高速に収束するマルコフ連鎖,および単調マルコフ連鎖を提案した.これらのマルコフ連鎖を用いて効率的な近似/完壁サンプリング法を提案した. また,コーダルグラフの列挙算法ならびにランダム生成法の研究にも取り組んだ.コーダルグラフは,数値計算,最適化,統計学などの分野で頻出するグラフクラスである.コーダルグラフの全列挙,ならびにランダム生成法は,統計学におけるグラフィカルモデリングにおけるモデル選択支援,MP困難問題である最小コーダルグラフ補完に対する効率的な探索などの応用をもつ. 我々は,2つの与えられたグラフに挟まれるコーダルグラフに対して,半順序構造が階層をなすことを示し,効率的な列挙算法を与えた.この結果を利用することで,直ちにコーダルグラフに対するマルコフ基底が得られ,マルコフ連鎖モンテカルロ法に基づくランダム生成法が実現できる.さらに,最小コーダルグラフ補完の局所最適性規準も与えている.
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