2004 Fiscal Year Annual Research Report
統計モデル多様体としての行列の空間の幾何構造に注目した統計理論
Project/Area Number |
04J11481
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 冬彦 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 時系列解析 / 情報幾何 / 量子情報 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、統計モデル多様体に微分幾何学的・位相幾何学的な手法を用いて、よりよいパラメータ推定方法を理論的に考察し、時系列解析から量子情報まで様々な分野に応用することであった。本年度の実績の概要は以下のようになる。 1.本研究では、AR過程、MA過程のモデル多様体でスカラー曲率を具体的に導出し、代数的な特異性をもつことを示した。このような代数的な特異性から、よりよい推定方法の有無を議論できるか調べることが今後の課題である。また、本研究のように、古典的な相関をもつデータから予測分布を構成する問題は比較的、研究されているが、量子系の場合には、まだほとんど考察されていない。そこで、近年の量子状態推定に関する多大な資料を調査したところ、ある種の状態予測の問題に限定すれば、古典的な場合と同等の議論が適用できることが判明した。これらを受けて、本研究では、ベイズ推定の枠組みで量子状態の予測問題を考察し、量子測定のもとで状態の予測方法を与え、最適性を証明した。この結果を発展させることで、古典的な時系列解析での成果と同様の成果を量子系の状態推定でも得られる可能性が出てきた。 2.量子通信路における十分統計量の問題は、古典的な場合と違ってエンタングルメント(量子相関)の効果が入ってくる。そのため、推定論・検定論の立場でエンタングルメントの効果を明確にする必要がある。例えば、量子通信路の推定問題ではエンタングルメントの効果によって推定精度が向上するケースが知られていたが、Amplitude Damping通信路の場合は向上しないことが本研究によって示された。
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