2005 Fiscal Year Annual Research Report
複数のキナーゼ活性を同時観察可能な蛍光プローブ分子の開発と細胞周期解析への応用
Project/Area Number |
04J11499
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河合 康俊 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 蛍光プローブ / 蛍光共鳴エネルギー移動 / 緑色蛍光タンパク質 / MAPキナーゼ / Erk / タンパク質リン酸化 / 可視化 / FRET |
Research Abstract |
MAPキナーゼファミリーの一員であるErkはさまざまな増殖因子や発がんプロモーターなどの細胞外刺激で活性化されるセリン/スレオニンキナーゼである.本研究ではErkのキナーゼ活性を蛍光顕微鏡下の単一細胞で可視化分析するための新規蛍光プローブ分子の開発を行い,Erk情報伝達系における新たな知見を得ることを目的として実験を行った.このプローブ分子は,Erkのリン酸化標的基質ペプチドである基質ドメイン,リン酸化された基質ドメインと結合するFHA2ドメイン,およびオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質の変異体であるシアン色蛍光タンパク質(CFP),黄色蛍光タンパク質(YFP)から構成されており,活性化Erkによってリン酸化された基質ドメインがFHA2ドメインと結合することに伴いCFP-YFP間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)効率が変化することを期待して,プローブ分子を設計した.このプローブ分子をコードするcDNAをヒト乳癌由来MCF-7細胞に導入し,上皮増殖因子(EGF)を添加して細胞外刺激を加えたところ,プローブのリン酸化に伴うFRET効率の減少が観察された.ウエスタンブロッティング法によりプローブ分子の基質ドメインがリン酸化されていること,また,Erkの活性化を阻害する薬剤U0126の存在下ではFRET効率の減少,基質ドメインのリン酸化ともに観察されないことから,このプローブ分子はErkの活性化を生細胞内で検出することができるものであることが確認された.また,プローブの応答から,Erkの活性化はEGFの添加直後ではなく約3分後から開始し,さらに,細胞質ではErk活性の上昇が一過的であるのに対し,核内では高い活性が長時間持続することを見出した.これまでにErk分子の細胞内動態に関する研究はいくつか行われているが,本研究は,Erkの「活性」の細胞内動態について新たな知見を与えた.
|