2005 Fiscal Year Annual Research Report
核融合炉固体増殖材料における水素同位体動的挙動の原子スケールでの解明
Project/Area Number |
04J11515
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小田 卓司 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化リチウム / 水素同位体 / 照射応答 / 核融合炉 / トリチウム増殖材料 / 分子動力学法 / 光電子分光法 / ポテンシャルモデル |
Research Abstract |
(i)酸化リチウム(Li_2O)表面における水の吸着・吸収挙動:X線/紫外線光電子分光法を用いて,Li_2O焼結体に水蒸気暴露を行うことで形成される表面水酸基の量を,暴露量の関数として評価した.モンテカルロ法を用いて水の吸着・吸収挙動をモデル化し,実験結果との比較を行った.表面第2層までへの吸着/吸収は速やか(吸着/吸収確率〜1)に起こるが,それ以深への吸収は緩やか(吸着/吸収確率<0.1)に進行することがわかった. (ii)Li_2Oのポテンシャルモデルの構築:密度汎関数法を用いて計算したLi_2O結晶の原子変位に対するポテンシャル曲線,あるいは実験研究で報告されているLi_2Oの物性値(弾性定数,ヤング率,格子定数など)を参照データとして,遺伝的アルゴリズムとニュートン法の併用によりポテンシャルパラメータを最適化することで,Li_2Oの2体ポテンシャルモデルを構築した.いずれの手法で作成したモデルにおいても,0Kでの物性値は程度良く再現することが確認された.しかし,熱膨張係数とLi拡散定数の温度依存性は,同時には実験結果と一致せず,顕著なポテンシャルモデル依存性が見られた. (iii)Li_2Oの照射応答:Li_2Oの中での照射欠陥の生成・消滅挙動を,分子動力学シミュレーションを用いて調べた.欠陥生成の閾値エネルギーの弾き出し方位依存性を分析した結果,LiはOに比べて低い閾値エネルギーを有すること,そしていずれの原子においても〔111〕,〔110〕,〔100〕の順に閾値エネルギーが低下することがわかった.また,照射エネルギー(6〜80eV)は数psの時間スケールで速やかに系全体に拡散し,欠陥の自己アニーリングは同程度の時間スケールで主に誘起されることが確認された.
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