2004 Fiscal Year Annual Research Report
新規合成方法論を用いたテトロドトキシンの効率的合成研究
Project/Area Number |
04J11537
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯村 峰孝 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | テトロドトキシン(TTX) / ナトリウムチャネル / 分子内Diels-Alder反応 / イソバニリン / ビシクロ[2.2.2]化合物 / Mislow-Evans転位 / シスジオール / 臭素化 |
Research Abstract |
テトロドトキシン(以下TTXと略す)は、神経細胞膜に存在するナトリウムチャネルを阻害する性質から、神経生物学における重要な研究ツールとして用いられており、TTXおよび類縁体の供給は合成化学が貢献すべき課題である。本研究は、鍵行程としてDiels-Alder反応を用いることにより、光学活性なTTXの効率的合成法の確立と、それを用いた生物学的応用への展開を目的としている。 本年度はTTXの合成に向けた初期的検討として、Diels-Alder反応の基質の最適化とその前後の合成経路の効率化を行った。 イソバニリンより数工程で得られる、分子内にプロパルギル基をもつフェノールに対して、ジアセトキシヨードベンゼンを作用させると、フェノールの酸化とそれに続く分子内Diels-Alder反応が円滑に進行し、望みとするビシクロ[2.2.2]化合物を良好な収率で得ることができた。また、Diels-Alder前駆体は、ベンジル位水酸基の不斉制御により光学活性体の合成にも適用可能であると考えられる。 さらに、得られたDiels-Alder生成物のアリルアルコール部位をスルホキシドへと変換し,Mislow-Evans転位を行うことによって水酸基の転位を行い、TTX合成のために必要となる、ビシクロ化合物の切断のための足がかりを得ることに成功した。 一方で、TTXのもつ水酸基の立体化学の制御に関する検討を行った。Diels-Alder生成物のα-ジケトン等価体部位を水素化ホウ素ナトリウムによる還元とケタールの脱保護を経て、TTXのもつシスジオール部位を立体選択的に得ることに成功した。 また、Diels-Alder前駆体であるフェノールに対してN-ブロモスクシイミドを作用させることにより、フェノールのパラ位を選択的に臭素化できることを見いだした。このことにより、TTXの持つもう一つの水酸基を導入するための足がかりを得ることに成功した。
|