2004 Fiscal Year Annual Research Report
GnRH情報伝達系の多様な生理機能-生殖腺における役割とその進化的意義-
Project/Area Number |
04J11570
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池本 忠弘 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | GnRH / 生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン / 脳下垂体 / 生殖腺 / 脊椎動物 / 脊索動物 / 比較生物学 / 進化 |
Research Abstract |
生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)は、脳下垂体の受容体に作用して生殖腺刺激ホルモンの放出を促進させる。このためGnRHは脊椎動物の生殖活動を支える情報伝達系において中心的な役割を担っていると言える。GnRHには多様な生理機能が想定されているが、その詳細は全く不明である。本研究ではまず、比較生物学的な観点から、脊椎動物に加え無脊椎動物である海鞘綱においてGnRH及びその受容体を網羅的に同定し、GnRH及び受容体両者の遺伝指数が動物綱ごとに、そしてときには同じ動物綱内で、著しく異なることを明らかにした。視床下部-脳下垂体-生殖腺軸にかかわるホルモン・受容体の遺伝子セットは、それぞれ脊椎動物の動物綱間で同一であるのが一般的である。このことはGnRHがもつ多様な生理機能の普遍性及び種特異性を理解するためには比較生物学的解析が必須であることを強く意味するものであり、特定の動物種でのみ散発的に行われてきた従来の研究に対して警鐘を鳴らすものである。 このような遺伝子セットの相違にもかかわらず、生殖腺におけるGnRH受容体の発現が海鞘綱を含む脊索動物6綱で普遍的な現象であることが本研究により発見された。海鞘綱には脳下垂体という独立した器官が存在しないことから、生殖腺に対するGnRHの生理的役割は進化的に古く、脳下垂体の出現以前から存在していることが示唆された。 更に、様々な動物種において、GnRH受容体の発現様式や細胞内GnRH情報伝達系が脳下垂体と生殖腺で完全に異なることが明らかになった。本研究の更なる進展は、生殖腺におけるGnRHの生理的役割とその進化的意義の究明に繋がるものと期待される。
|
Research Products
(1 results)