2004 Fiscal Year Annual Research Report
原位置宇宙線生成核種濃度の定量による花崗岩地形形成プロセスの解明
Project/Area Number |
04J11988
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
若狭 幸 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙線生成核種 / 原位置 / 花崗岩 / 侵食速度 / 露出年代 / 剥離速度 / シーティングジョイント / 加速器質量分析 |
Research Abstract |
本研究では,新しい手法として注目されている原位置宇宙線生成核種(Terrestrial Cosmogenic nuclide : TCN)年代測定法を用いて,花崗岩地域の地形形成プロセスを理解することを目的としている.TCNは地表面物質に宇宙線が照射することによって生成され,時間とともに蓄積される.TCNは加速器質量分析(AMS)によって定量することができ,その蓄積量を年間あたりの生成率で除することによって年代測定が可能である.TCN濃度を定量するために,岩石からTCNを抽出し,AMS用に試料を処理する化学的手法や実験器具および実験室の改良・構築を行った.これにより,これまで1ヶ月要していたのに対し,2週間ほどで化学処理が行えるようになり,効率よく多くの試料を処理,測定できるようになった.また,扱うことのできる岩質は日本では化学処理法の限界により花崗岩のみであったが,処理法の改良により,砂岩,チャート中のTCN濃度も測定が可能となった.アプリケーションとして,韓国ソウル北部に位置する花崗岩ドームを対象とした.このドームは高低差300m程度で,厚さ25cm〜160cmのシーティングジョイントが発達する.ここで,隣接した5枚のシートから試料を採取し,TCN濃度を測定した.また,シーティングジョイントの間隔値と各シートの風化指標値のフィールドデータを得た.シーティングジョイントの配列を基に剥離モデルを構築したところ,岩盤の剥離速度と風化速度を得ることができた.岩石の風化速度として数値時間軸を入れた試みははじめてであり,岩盤の剥離速度は実際の地形プロセスに即して得られていることがこの研究の特色である.この成果は国際ワークショップや国内学会で発表し,現在国際雑誌に投稿中である.
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