2005 Fiscal Year Annual Research Report
野生由来マウスを用いたオープンフィールド行動の遺伝解析
Project/Area Number |
04J12064
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
高橋 阿貴 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オープンフィールド行動 / 情動性 / 野生由来マウス系統 / コンソミックマウス系統 / 動物行動学的解析 / 遺伝学的解析 |
Research Abstract |
国立遺伝学研究所にて樹立された21種類のC57BL/6とMSMのコンソミックマウス系統を用いてオープンフィールド行動の解析を行っている。コンソミックマウス系統とは、マウスの染色体19対及び性染色体のうちいずれかが他系統の染色体(ここでは1対のみがMSM、他はC57BL/6)に由来している系統である。親系統であるMSMは野生で捕獲されたマウスを近交化した系統であり、一般的な実験系統であるC57BL/6とは異なる亜種に属し、遺伝的・行動的に大きく異なる。これまでの解析により、親系統であるMSMとC57BL/6がその時間変化パターンに顕著な差があることを確認した(Takahashi et al.,2006)。コンソミックマウス系統を用いて更に解析することで、19対の染色体および性染色体のいずれが各行動に影響を与えるのかを検討できる。本研究により、これまで行動的・遺伝的に様々な要因が混在して行われていた研究に対して、より具体的な遺伝子座の同定を行うことが可能となると期待される。 現在、8割がたのコンソミックマウス系統について解析が進んでおり、来年度初めには解析終了予定である。興味深いことに、オープンフィールド移動活動量について、複数の系統で親系統であるC57BL/6と差を示した。このことは、オープンフィールド行動に関わる遺伝子が複数存在することを示している。また、詳細な行動観察から、移動活動量だけでは見られない各系統の特徴があきらかとなった。例えば、3番染色体コンソミック系統(B6-3MSM)と9番染色体コンソミック系統(B6-9MSM)はともに高活動系統であったが、B6-9MSMは中央部を避け、周囲を走り回る系統であったのに対し、B6-3MSMは立ち上がりやジャンプも多く示す系統であった。B6-17MSMは自発活動はB6とはそれほど変わらないが、新奇場面での活動量が低く危険評価行動(stretching)が多く出現し、恐怖反応も高い(fear conditioning)ことから、情動性に関わる遺伝子座が存在すると期待された。現在、17番染色体上の更に細かい領域のみをMSMに置き換えたコンジェニックを作成しており、その解析から、17番染色体上のテロメア付近に候補遺伝子が存在することが示唆されている。
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Research Products
(3 results)