2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト人工組織・臓器の構築用マテリアルを指向したゲルの機能化に関する研究
Project/Area Number |
04J54191
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂口 博一 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 再生医療 / ゲル / 高分子超薄膜 / 交互吸着法 / コントロールドリリース |
Research Abstract |
本研究では、様々な物質を担持可能であるゲルを組織再生用マトリックスとして用いようと考えた研究を展開している。モデル物質として、カルシウムイオンを豊富に担持した構造を有するアルギン酸ゲルを用いた。ゲル表面を交互吸着法によって高分子超薄膜(ポリジアリルジメチルアンモニムクロライドとポリスチレンスルホン酸ナトリウムからなる)でコートした。既報に従って、ポリマー溶液に塩化ナトリウムを添加して膜を調製したところ、アルギン酸ゲルの崩壊が観察された。これは、アルギン酸ゲルの架橋に用いられているカルシウムイオンとカルボン酸イオンの静電相互作用が解消されたためであると考えられる。そこで、本系においてはポリマー溶液に塩化カルシウムを添加し、膜を調製した。この結果、膜の調製過程でアルギン酸ゲルの崩壊は起こらなかった。塩化カルシウムを添加して調製した膜の形成挙動は、水晶振動発振子を用いて定量的に解析した。 アルギン酸ゲルとナノコートしたアルギン酸ゲルを異なる条件の溶液中に浸漬させ、ゲルの膨潤挙動を直径変化から観察し、得られた結果からカルシウムイオンの放出挙動を検討した。同数ステップコートした(ゲル表面に調製した膜の厚さが同じということ)アルギン酸ゲルを異なるイオン強度を有する塩溶液中に浸漬させた結果、どのイオン強度の溶液においてもナノコートしたゲルはコートしていないゲルよりも膨潤速度が大幅に低下した。また、様々な膜厚を有する超薄膜でナノコートしたゲルを膨潤させたところ、膜厚の増加に伴い膨潤速度が低下した。これらの結果は、アルギン酸ゲル内部からのカルシウムイオンの放出や外部からの水分子やイオンの流入が抑制されたことを示唆しており、ゲル表面を高分子超薄膜でコートすることによってゲルに内包させた物質の放出量や速度を調節できると考えられる。
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