2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J54201
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
宮元 香織 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 横穴式石室 / 因幡 / 伯耆 / 大和 / 考古学 / 葬送儀礼 / 社会構造 / 古墳時代 |
Research Abstract |
古墳時代後期の社会構造を、横穴式石室を通して復原することを目的として、本年度の研究をおこなった。本年度は因幡・伯耆・畿内の横穴式石室について考察をおこなった。 畿内の横穴式石室については、先行研究によって示されたような、一つの系統の横穴式石室が統一的に造られていたという状況はみられず、多数の系統の石室、少なくとも7つの系統の横穴式石室が造られていたことがわかった。しかしこれら畿内の横穴式石室にみる"錯綜状況"は、一定の方向性と、系統相互の強い関係性を保持したものであることがわかった。つまり、畿内の横穴式石室はバリエーションをもちながらも、その葬送儀礼において一定の規範のようなものを共有しており、それにしたがって畿内の石室が造られていたと考えられるのである。横穴式石室の検討をとおした後期古墳時代研究のみならず、古墳時代の社会構造全般について検討する際、畿内という地域はつねに必然的に"ひとつの"地域で、同一の方向性と、強い統一性をもったひとつの政治構造であると認識されてきた。しかしながら今回、横穴式石室を通して、畿内社会をみた際、いくつかの特徴が顕著に共有されるという状況はみられつつも、到底一つの強固なまとまりとして認識することはできないことがわかった。 そのような畿内の状況を参考にして因幡・伯耆の状況を考察すると、概地の横穴式石室には畿内以上の系統数がみられることがわかった。それらのうちには、畿内の横穴式石室と同じ変化の方向性を保つもの、つまり葬送儀礼を共有する系統もあり、また一方で山陰に独特の葬送儀礼に対応した系統もみられる。このことから因幡・伯耆の横穴式石室の系統差には葬送儀礼の相違が反映されていることがわかった。つまり同じ「横穴式石室」という埋葬施設で、時期・構造などに共通点を多く有していても、その表すものや機能は地域や集団によってまったく異なっているということがいえる。
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Research Products
(1 results)