2004 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱法を用いた超臨界水の構造とダイナミクスの研究
Project/Area Number |
04J72803
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
高田 慎一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 超臨界水 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
超臨界流体は、溶質を溶解するという溶液的性質ならびに拡散性に優れているとう気体的性質を合わせ持った工業的、学術的にも魅力あるものである。その超臨界流体の代表である超臨界水は常温常圧では不溶な多くの有機物質を溶解し、圧力・温度の変化で連続的に流体の諸物性を容易に制御できる利点などから、環境にやさしい溶媒として様々な反応系への利用が考えられている。本研究では、その超臨界水の溶媒としての特性の解明のため、その原子レベルから分子分布(密度揺らぎの不均-性)の描像を広い空間スケールにおいて測定した。まず、超臨界水の部分動径分布関数を高エネルギー加速器研究機構・中性子科学研究施設における中性子全散乱装置(HIT)を用いて測定した。同位体置換法により酸素-酸素、酸素-水素、水素-水素の部分動径分布関数を0.2g/ccというこれまで測定されていない低密度状態の測定に成功した。その結果、これまで報告されている高濃度の超臨界水の測定結果とは異なり、第二次隣接間距離がブロード化するという興味深い結果が得られた。また小角・広角中性子散乱装置(SWAN)を用いて、臨界点付近のD_2Oの分子分布の不均-性の測定を広範囲の空間スケール(0.01Å^<-1>【less than or equal】Q【less than or equal】4Å^<-1>)で行なった。その得られた散乱関数は、Omstein-Zernike関数とローレンツ関数を足し合わせた式でうまく再現できることがわかった。また同時に、臨界状態(例えば400℃,22Mpa)の高温・高圧測定で用いたセルならびに周辺装置の改良を行うことで、温度および圧力の安定性が向上しこれらの測定が可能となった。
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