2006 Fiscal Year Annual Research Report
マウスの学習障害および脳酸化ストレスに対する抗酸化剤の役割
Project/Area Number |
05F05691
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
安西 和紀 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, チームリーダー
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MANDA Kailash 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 外国人特別研究員
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Keywords | α-リポ酸 / タンパク質カルボニル化 / 脂質過酸化 / フリーラジカル / 抗酸化剤 / 水迷路法 / X線照射 / 脳 |
Research Abstract |
本年は、生体成分として体内に存在する物質であるα-リポ酸の防護作用について検討した。 マウスに対する4Gyあるいは6GyのX線全身照射前にα-リポ酸を投与しておくと、放射線による血漿の全抗酸化能(total antioxidant capacity ; TAC)低下が顕著に阻害された。放射線による脳、肝臓、脾臓、腎臓、および睾丸における非タンパク性SH基の減少も、α-リポ酸の照射前投与によって抑制された。放射線によるタンパク質カルボニルの増加は脾臓で最も高く、次いで、脳、腎臓、睾丸、肝臓の順であった。放射線によるカルボニル増加に対するα-リポ酸の防護効果は6Gy照射の脾臓で最も高く、4Gy照射の肝臓で最も低かった。放射線による脂質過酸化(malondialdehyde(MDA)レベルで評価)の増加は脳で最も高く、次いで、睾丸、脾臓、脳、腎臓、肝臓の順であった。放射線によるMDA増加に対するα-リポ酸の防護効果は脳で最も高く、脾臓で最も低かった。これらの結果は、α-リポ酸がフリーラジカルを消去する強力な抗酸化剤であるという考えと合致する。 放射線照射の有無によるマウスの行動変化、およびそれに対するα-リポ酸の効果を調べた。行動は、水迷路法による記憶力測定と自発運動測定装置による自発運動測定を行った。マウスに対して6GyのX線を全身照射すると、記憶と自発運動量のいずれも低下した。しかしながら、照射前にα-リポ酸を腹腔内投与しておくと、これらの認知能力低下は顕著に抑制された。α-リポ酸はX線照射による脳のタンパク質カルボニルの増加やチオバルビツール酸反応産物の増加を顕著に抑制した。また、脳の形態像を観察すると、α-リポ酸を投与したマウスでは正常なプルキンエ細胞や顆粒細胞が非投与マウスに比べて多かった。これらの結果は、α-リポ酸が強力な能保護剤であることを示している。
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Research Products
(5 results)