2005 Fiscal Year Annual Research Report
乳牛の黄体退行と血管機能:黄体周辺部血流調節の分子機構
Project/Area Number |
05J00685
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
白砂 孔明 岩手大学, 大学院・連合農学研究科, DC1
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Keywords | 黄体 / 黄体退行 / 血流 / 一酸化窒素 / 血管作動性物質 |
Research Abstract |
実験目的 申請者はこれまで、ウシ黄体退行に先立ち必ず黄体周辺部の血流増加現象が起きることを発見し、本現象が黄体退行にとって普遍的な局所現象であることを示してきた。この現象は、黄体退行カスケードの最上位に位置するシグナルである可能性が非常に高い。今年度の研究では、黄体周辺部の血流増加に始まる自発的な黄体退行カスケードの上位部分を解明するため、血管機能や黄体血流を調節する遺伝子群の特定を試みた。 実験モデル 黄体期中期からカラードップラー超音波画像診断装置を用いて黄体内血流変動観察を行い、血液供給について詳細な解析を行う。さらに、リアルタイムバイオプシーを用いて微量の黄体組織を経時的に採取し、血管作動性因子関連の遺伝子群のmRNA発現をリアルタイムPCRにより解析した。 実験結果 黄体内血流観察と内分泌環境:黄体退行開始(血中P減少開始)前に、黄体内血流域が200%まで急激に増加し、その後徐々に減少した。黄体内血流域の増加と一致して、血中PGFMのピーク状放出が確認できたことから、本現象は子宮由来のPGF2αによって引き起こされていることが示唆された。 遺伝子群の特定:血管弛緩因子である一酸化窒素合成酵素のmRNA発現動態が、黄体内血流域の増加・減少と完全に一致することを見出した。また、黄体退行開始直後から血管作動性物質(エンドセリン-1、アンギオテンシンII)に関するmRNA発現が増加し続けた。 以上の結果から、黄体退行カスケード開始シグナルと考えられる黄体周辺部血流域増加現象は、子宮PGF2αで刺激された一酸化窒素による血管弛緩作用で誘導される現象であるということが示唆された。現在は一酸化窒素産生刺激因子を直接黄体内に投与することで、黄体周辺部血流増加現象を引き起こせるかどうか、またその生理学的インパクトを検証している。
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Research Products
(3 results)