2005 Fiscal Year Annual Research Report
剛直な環骨格を活用した直線状ケイ素配列による新規共役系の構築とその物性
Project/Area Number |
05J01340
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐瀬 祥平 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ケイ素 / 光物性 / トリプチセン / 分子ワイヤー |
Research Abstract |
本研究の目的は、剛直なジシラトリプチセン骨格を活用してケイ素一次元配列を構築し、その分子ワイヤーとしての機能を評価することである。標的化合物は、ジシラトリプチセンを橋頭位ケイ素で直接連結したオリゴマーとした。その合成にあたり、十分な溶解度を得るべく、アルコキシ基をベンゼン環上に導入したジシラトリプチセンユニットを設計し用いた。 標的化合物は以下のように合成した。すなわち、橋頭位に臭素原子を有するジブロモジシラトリプチセンを、リチウムナフタレニドで還元的カップリングした後、クロロトリメチルシランで処理することで、両末端にトリメチルシリル基を有するオリゴマーを単量体から五量体まで合成・単離した。これらは、それぞれケイ素原子4、6,8,10,12個からなる一次元配列に相当する。二量体については、X線構造解析より6つのケイ素原子がほぼ直線状に並んでいることを明らかにした。 これらオリゴマーについて光物性を検討した。磁気円二色性スペクトルでは、240nm付近の遷移で長波長シフトが見られ、電子が非局在化していることが示唆された。電子状態の詳細を明らかにするべく、理論計算により分子軌道を解析したところ、π^*_<Si-Si>軌道を含む空軌道は分子全体に広がりを持ち、ユニット数の増加に伴い軌道エネルギーが低下するのに対し、HOMOはベンゼン環に局在化しており、軌道エネルギーはユニット数によらずほぼ一定であった。すなわち、今回のケイ素一次元配列では、π^*_<Si-Si>軌道が関与した電子の非局在化による励起状態(Frank-Condon状態)の安定化が、遷移エネルギーの低下に寄与していることが分かった。さらに、発光スペクトルでも、ユニット数増加に従い発光波長が長波長シフトしており、発光状態でもπ^*_<Si-Si>軌道が関与した非局在化が起きていることが示唆される。
|
Research Products
(1 results)