2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J01493
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 慶太 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カント / 歴史 / ドイツ / 歴史哲学 |
Research Abstract |
研究課題「カント以降のドイツ哲学における『歴史』概念の解明」に即して、本年度の研究を進めた。世紀転換期(1880年頃〜1920年頃)のドイツ哲学において、カント哲学の復権と歴史の問題への注目とが平行している点を手がかりとして、カント自身の歴史哲学の固有性を具体的に確認する作業をおこなった。この成果は「実践としての歴史哲学-カント歴史哲学の基礎的構造について」(『アルケー関西哲学会年報』No.13所収)という題名で学術雑誌に掲載された。この論文で私は、しばしば<啓蒙主義的な進歩史観の一類型を示しているにすぎない>と解釈され、カントの実践哲学にそぐわないと見られている論考、「世界市民的見地における普遍史の理念」を取り上げた。従来のこの論考の解釈は、特にカントが描く歴史像にのみ目を向けたために、カント歴史哲学の固有性を見落としてしまっている。私の考えによれば、この著作での実践哲学と歴史との関係は、歴史のうちに生きる人間においてではなく、歴史を書く人間のうちに見られるべきであり、その点にこそ実践哲学との連絡をつける手掛かりがある。カントは歴史を書く者に、『実践理性批判』において主題とされる自由のあり方、具体的に言うと、<いかなる特定の関心にも縛られない視点を持つ態度>を要求している。歴史の展開を巨視的にみるのではなく、歴史と、それを書き記す人間のあり方との関係に焦点を絞るということ、この点にカント歴史哲学の固有性を確認することが出来る。また、この点において、巨視的に見られた歴史というよりは、人間の歴史性に定位する世紀転換期ドイツの歴史思想との親和性も見られるので、以上の研究成果は世紀転換期ドイツ哲学へのカントの影響を考えるための、一つの手掛かりになるといえるだろう。
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Research Products
(1 results)