2005 Fiscal Year Annual Research Report
近絶滅種タイマイをモデルとした人工育成種苗の海洋における生存過程に関する研究
Project/Area Number |
05J01976
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥山 隼一 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ウミガメ / 人口育成種苗 / 超音波テレメトリー / 絶滅危惧種 / 行動生態学 |
Research Abstract |
本研究では、生物多様性の保全に貢献する人工増殖事業を実現するため、タイマイ人工種苗の放流後の生存過程の解明を目的とした。海洋への放流時期にあたる人工種苗5個体と同サイズの天然個体5個体を供試個体とした。本実験は、沖縄県八重山諸島石西礁湖にて実施した。同地点・同時間にタイマイ天然個体・人工種苗を放流し、超音波バイオテレメトリーを用いてそれらの行動を追跡した。またそれぞれを比較することで、人工育成種苗と天然個体との行動の違い、類似点を明らかにした。次に、放流個体を再捕獲し、摂餌物調査を行うことによって、海洋の餌対象物にどれくらいの期間で適応するようになるのかを明らかにした。 本実験の結果、天然個体の移動はすべてリーフエッジ沿いで行われ、放流後2〜9日間で受信範囲を越えた。天然個体の移動方向はすべて、彼らが捕獲された地点の方向と一致していた。また、実際に2個体は放流後6ヵ月後にそれぞれ以前捕獲された同地点で再捕され、彼らが生息域に回帰したことが示唆された。一方、人工種苗は4個体が4〜14日後に受信範囲を超えたが、その行動はリーフエッジ沿いではなく、移動方向は様々であった。これらのことから、人工種苗は放流地点から徐々に様々な方向へ拡散したことが示唆された。また1飼育個体は放流後88日間、放流地点付近に滞在し漁業者に捕獲された。この個体の排泄物調査から、野生個体が捕食するナンコツカイメンを放流後に採餌していたことが明らかになった。滞在深度や日周行動のリズムに関しては、両者の間で有意な差は認められなかった。 以上のことから、人工種苗は天然個体と同様の潜水能力、生活能力を有していることが明らかとなったが、行動圏に関しては違いがあることが明らかとなった。今後は、人工種苗をいつ放流すれば天然個体と同様の行動を取るようになるのかを明らかにし、人工増殖技術開発へ資する知見とする。
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Research Products
(1 results)