2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J03336
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 宏之 東京学芸大学, 連合学校教育, 特別研究員(PD)
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Keywords | 御家騒動物 / 実録 / 国家 / 権力構造 / 改易 / 家中騒動 / 養子相続 |
Research Abstract |
本年度は、(1)「越後騒動物」の流布を悉皆調査、(2)大名家文書の史料調査を行った。 (1)「越後騒動物」の悉皆調査によって網羅的に把握し、データベースを作成した。現在、100本確認され、引続き調査を行う。また、書物の伝来事情と系統の書誌学的研究、書物の世界と読者の関係性の検討から地域的に全国的な広がりをみせ、身分階層的にも大名家・藩士の蔵書から学者・学校・民衆まで広範囲に流布していたことが確認できた。さらに、実録物が本来もつ娯楽読物としての性格に加え、教訓書として読まれた側面をあきらかにした。これによって越後騒動の歴史的位置は、将軍権力の強化を目指した徳川綱吉の「御代始」の改易から人びとが教訓とすべき騒動へと江戸時代の民衆における認識が転化したと指摘した。これにより、従来、その内容が虚構とされ、使用が避けられてきた「御家騒動物」の記録・実録を研究の俎上に上げることで、御家騒動研究は個別事例研究から江戸時代を通じての歴史的な位置づけをあきらかにするという新たな研究段階に入ったのである。 (2)大名家の比較検討を行うため、津山松平家・鳥取池田家・三春秋田家・中村相馬家・松代真田家などの史料調査を行った。そのさい、「養子」問題や改易など大名家の存続に関わる問題に注目し、それに関わった大名家がどのように機能していたのか、幕府・藩・藩領民の関係性および相互規定性をあきらかにした。それによって、大名家が近世国家の一組織として機能する権力構造の見通しを得た。したがって、ある事柄に関わるすべての大名の動きを分析し、大名家を取り巻く社会的関係をあきらかにする方法は、近世国家をトータルに把握する視角であることを提起した。
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Research Products
(4 results)