2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J03415
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鎌野 寛之 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カイラル対称性 / カイラル簡約公式 / ハドロン反応 / バリオン共鳴 / Roper共鳴 / シグマ中間子 |
Research Abstract |
核子の第二励起状態であるRoper共鳴は、約33%の分岐比をもって核子とπ中間子二つへ崩壊する。この崩壊に関する質量分布の計算が過去に行われているが、そこではいくつかの物理量を同時に再現できないことが問題になっている。本研究では、過去の「半経験的」な議論では見過ごされていた寄与の存在を、カイラル簡約公式に基づく一般的議論によって指摘し、その新しい寄与が問題の解決に不可欠であることを示した。また、この寄与の存在はカイラル対称性の明白な破れに起因していることから、今回の結果は「カイラル対称性の明白な破れの効果は小さく第一次近似では無視できる」という従来の素朴な結論が、共鳴状態が現れるエネルギー領域では成立しない可能性があることを示唆している。以上の結果は、Physical Review C誌において発表された。 次に、上述の結果を測定可能な対象であるπN→ππN反応に適用し、Roper共鳴とその崩壊過程が反応に与える影響について理論的に調べた。その結果、最近ブルックヘブン国立研究所において測定されたπN→ππN反応のデータに見られる特徴的な振舞いは、Roper共鳴の二つの崩壊過程の間の強い干渉効果によって生じることが判明した。また、すべての実験データを再現するためには、反応の終状態に現れる二つのπ中間子の間で生じる再散乱の効果が不可欠であることが分かった。再散乱の効果は、その存在に関して現在活発な議論が行われているσ中間子の伝播に相当する。近年核媒質を利用したσ中間子の探索が行われているが、今回の結果は、πN→ππN反応のような素過程においてもσ中間子についての有益な情報を含む可能性を示唆している。また今回の結果から、この反応の詳細な解析を進めることによりσ中間子の存在に対して肯定的な結論が得られると期待できる。πN→ππN反応に関する内容は、現在Physical Review C誌に投稿中である。
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Research Products
(1 results)