2005 Fiscal Year Annual Research Report
多周波ESR分光法による新規機能性高スピン分子システムの開拓
Project/Area Number |
05J03428
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
沢井 隆利 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ESR分光 / 高スピン化学 / 超分子化学 / ニューテーション分光法 / カリックスアレン |
Research Abstract |
包接機能性に優れるカリックスアレンを用いた金属応答型高スピン磁気的システムを構築するための設計指針を確立することを目的として、カリックスアレンの基本骨格を通したスピン間の磁気的相互作用について詳細に検討した。スピン間の磁気的相互作用を明らかにするためのモデル分子として、比較的剛直な分子骨格を有するメタシクロファンにニトロキシドラジカルサイトを4箇所導入した、メタシクロファンニトロキシドテトララジカル(分子1)を分子設計し、合成に成功した。分子1のX線結晶構造は、ラジカルサイト間の直接的なThrough-space相互作用を逓減するような構造をしており、カリックスアレンの基本骨格を通したラジカル間相互作用を解明するために適した分子システムであることがわかった。溶液状態で観測した分子1のcw-ESRスペクトルは等価な4つの窒素核に由来する9本線を示し、窒素核の超微細結合相互作用よりも大きな交換相互作用がラジカルサイト間に働いていることがわかった。分子1のスピン多重度を同定するためにパルスESR法を用いた二次元電子スピンニューテーション法を適用した。5重項状態に由来するニューテーション周波数が観測されることを明らかにし、分子1中の4つのスピンサイトが大環状骨格を通じて磁気的に相互作用し、基底5重項高スピン(S=2)状態を形成していることを実験的に証明した。得られた結果は、カリックスアレンの基本骨格を利用して、高スピン状態が構築可能であることを明確に示すものであり、ゲスト応答型高スピン磁気的システムを分子設計する際の重要な知見となる。また、非局在型高対称高スピン系の電子状態・分子構造と量子物性の相関の解明を目的として、さまざまな比局在型高対称分子の分子軌道計算を行い、縮約密度行列法を適用することにより分子軌道から主要なスピン構造の抽出を行い、非局在型高スピン分子の化学結合論的な考察を行った。
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Research Products
(2 results)