2005 Fiscal Year Annual Research Report
高速時間分解振動分光による新規光センサータンパク質の構造変化と機能発現機構の解明
Project/Area Number |
05J03882
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水野 操 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 時間分解振動分光 / 共鳴ラマン散乱 / 光センサータンパク質 / タンパク骨格構造変化 |
Research Abstract |
光センサータンパク質は、センサー部(発色団)が光を吸収して誘起される構造変化が、周辺のタンパク骨格に伝播することでその生理機能を発現させる。本研究は、ピコ秒時間分解紫外共鳴ラマン分光を用いて、タンパク骨格の光誘起構造変化の伝播過程を追跡し、タンパク質の機能発現機構を解明することを目的としている。 本年度は、光センサータンパク質のイエロープロテイン(PYP)およびフォトトロピンについて、タンパク骨格の二次構造を反映するアミドバンドや、芳香族アミノ酸残基のバンドの光誘起構造変化に伴うスペクトル変化を観測することを試みた。しかしながら、既存の実験装置ではこれらのスペクトル変化を観測することができなかった。そこでより質のよいスペクトルの観測、より多様な実験条件の選択が可能となるよう装置を改良した。具体的には、 1.ポンプ光の波長選択範囲の拡張:タンパク構造変化に伴うラマン散乱強度変化を効率よく検出し、光による試料劣化を最小限にするため、ポンプ光の波長選択は重要である。既存装置で使用していたチタンサファイアレーザーの2倍波(400nm付近)の他に、新しくラマンシフタおよび光パラメトリック増幅装置を導入することで、それぞれ450nm付近、550nm付近の光をポンプ光として用いることが可能となった。 2.プローブ光の高強度化:紫外共鳴ラマン測定では、発生したラマン散乱光が試料に再び吸収されてしまう自己吸収が深刻な問題である。(特にアミドバンド観測(プローブ波長<210nm)において)プローブ光の高強度化により、検出されるラマン散乱光強度が増加するためS/N比が改善した。 3.フロー装置の製作:本研究で対象とするタンパク質は、光劣化しやすく、また反応中間体の寿命が長い。そのため、従来の少量試料測定用の回転セルを用いた実験が不向きである。さらにセル表面への試料の沈着がスペクトルの質を落とす。そこで試料を液膜状にフローさせる装置を製作した。 現在、PYP・フォトトロピンのほかに、現在、ピコ秒時間領域におけるバクテリオロドプシンのタンパク骨格の光誘起構造変化ダイナミクスを追跡している。
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