Research Abstract |
申請者は,生きた細胞内で,細胞増殖や分化に必須である細胞内セカンドメッセンジャー分子を可視化検出するための方法を創生している.平成17年度は,以前から開発を進めていたイノシトール三リン酸(IP_3)の生細胞内検出プローブ分子の開発に関する研究を論文にすることができた.IP_3は,ホルモンや神経伝達物質などの細胞外刺激によって,生体膜から細胞質中に切り出され細胞内カルシウム濃度を上昇させ,様々な生体応答を制御する.また,細胞質だけでなく,核内においてもIP_3は産生することが知られている.このIP_3は,核内のカルシウム濃度を制御することによって,転写など生体応答に関与していることが知られているが,その産生動態については不明である.申請者のプローブ分子は,細胞質のIP_3の濃度変化を観察することができるだけでなく,局在シグナルをプローブ分子に取り付けることによって,興味のある場所にプローブを局在させ,そこでのIP_3の濃度を測定することが可能である.そこで,申請者らは,プローブ分子に核局在シグナルを取り付けることによって,核内でのIP_3の動態を観察した.細胞外刺激を加えて,細胞質中と核内のIP_3産生を比較したところ,両者の産生パターンは同様であった.これにより,核内のIP_3は,核膜によって隔てられているにもかかわらず,細胞質のIP_3と同時に制御されていることが明らかとなった. 一方,現在行っているジアシルグリセロールの生細胞内可視化,検出法の開発については,プローブ分子の作製が完了した.さらに,このプローブ分子が,ジアシルグリセロールのアナログであるホルボールエステルに応答することが分かった.現在,様々な細胞外刺激に応じてジアシルグリセロールが産生する様を観察している.
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