Research Abstract |
本年度は,レム睡眠期の脳波特徴と,事象関連電位の性質について研究を行った。まず,レム睡眠を6つの段階に分類し,脳波の特徴を調べた結果,レム睡眠期の脳波は,ほぼθ波期と平坦期が占めており(92.7%),これまでレム睡眠の特徴的脳波として注目されてきたα波や鋸歯状波といった脳波特徴はレム睡眠期にはほとんど見られないことが分かった。また,レム睡眠期の開始2分間と終了2分間で,各脳波段階の出現回数を比較してみると,鋸歯状波期は開始2分間で多く,平坦期は終了2分間で多いことも分かった。これらのことから,レム睡眠期の脳波パタンは,類似していると言われてきた入眠期の脳波パタンとも異なるということが示された。この知見については,国際誌(Sleep and Biological Rhythms)に投稿し,受理されている。 また,新たにレム睡眠期の事象関連電位と刺激間間隔に関する実験を行った。筆者らの発見したレム睡眠期の後期陽性成分P400は,急速眼球運動が激しく起こっている区間(phasic期)では出現しにくく,刺激間闇隔を30秒以上あけることによって刺激の顕著性を高めると,確認することができるというこれまでの結果を受け,刺激間間隔を1.5秒から48秒までステップワイズに増加させていき,P400の出現様式を観察した。結果,レムtonic期(急速眼球運動なし)では刺激間間隔に応じたステップワイズの増加を示したのに対し,レムphasic期では,30秒を超えるまで一定の振幅を示し,十分に間隔があくと振幅が急激に増加するという性質を示した。このことは,レムphasic期の反応性の低さを特徴的に示している。この結果は,来年度の国内学会(日本生理心理学会,日本睡眠学会)・国際学会(ヨーロッパ睡眠学会)で発表していく予定である。また,レム睡眠期の後期陽性成分に関する研究は,現在国際誌(Sleep)に投稿中である。
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