2005 Fiscal Year Annual Research Report
シス-β型および7配位五方両錐型錯体を利用した電子環状付加反応の制御に関する研究
Project/Area Number |
05J06222
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 和弘 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | エポキシ化 / 過酸化水素 / 不斉触媒 / チタン / 酸化 |
Research Abstract |
光学活性なエポキシドは合成中間体として非常に有用であり、その合成法について活発な研究がなされている。なかでも、オレフィン類の触媒的不斉エポキシ化は、光学活性なエポキシドを得る最も直截的で有効な合成法である。不斉エポキシ化には様々な酸化剤が用いられているが、過酸化水素、特に過酸化水素水は取り扱いが容易な上、安価で副生成物が無害な水であり、工業的観点からだけでなく環境調和の面からも極めて優れた酸化剤である。しかしながら、過酸化水素水を酸化剤として用いる高収率・高立体選択的な単純オレフィンの一般的な不斉エポキシ化は知られていなかった。 そこで、di-μ-oxotitanium(salen)錯体が尿素・過酸化水素付加物存在下、スルフィドを高エナンチオ選択的にスルホキシドへと酸化するという知見を基に、新たにdi-μ-oxotitanium(salalen)錯体の合成とその触媒活性についての検討を行った。目的とするsalalen錯体は相当するサレン配位子を単核のtitanium(salen)(OiPr)_2錯体に導き、分子内Meerwein-Ponndor-Verley還元を行った後水処理によって合成することができた。次に本錯体を用いて不斉エポキシ化の検討を行ったところ、種々の単純オレフィンを高エナンチオ選択的にエポキシ化することができた。例えば、従来法では困難であったスチレンのような末端オレフィンでも室温にて高エナンチオ選択的にエポキシ化することが可能であり、シス-オレフィンは立体特異的にシス-エポキシドへと変換される。また、1-octeneのような脂肪族末端オレフィンにおいても、収率は低下するものの、高いエナンチオ選択性を示した。 以上、di-μ-oxotitanium(salalen)錯体が過酸化水素水を用いた単純オレフィンの不斉エポキシ化に極めて有効であることを見出した。
|
Research Products
(2 results)