2006 Fiscal Year Annual Research Report
ポルフィリノイド低原子価金属錯体の新規創製とユニークな反応性の評価
Project/Area Number |
05J06238
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 和幸 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 人工ヘム類縁体 / 電子求引基 / ポルフィセン / ミオグロビン / リガンド挙動 |
Research Abstract |
ヘムは鉄を中心金属に有するポルフィリン錯体であり、ヘムを活性中心とするヘムタンパク質には酸素貯蔵を司るミオグロビン、酸化反応を行うシトクロムP450などが存在する。これらのヘムタンパク質に対し天然のヘムを除去し、有機合成によって得られた人工ヘムを挿入することにより、機能の向上および変換が可能であると考えられる。 これまでの研究により、ポルフィリンの構造異性体であるポルフィセンのピロールβ位に、強力な電子求引基であるCF_3基を4つ導入した錯体は通常のポルフィリン・ポルフィセンには見られないユニークな性質を有していることが明らかとなった。例えば、ピリジン中でCF_3基を側鎖に有するポルフィセン鉄三価錯体が、容易に自動還元され鉄二価状態が安定に存在することが観測されている。 そこで、ポルフィセン骨格に電子求引基を持ち、さらにヘムタンパク質へ再構成可能とするためプロピオン酸側鎖を導入した電子疎な人工ヘム類縁体の合成を行った。この人工ヘム類縁体をアポミオグロビンに挿入し、ミオグロビンの酸素親和性への影響を評価した。 得られた再構成ミオグロビンは、UV-visスペクトル、ESI-TOF-MSにて同定を行った。再構成ミオグロビンの酸素結合体、一酸化炭素結合体を調製し、UV-visスペクトルにて同定した。続いて、再構成ミオグロビンの酸素親和性、一酸化炭素親和性の測定を行った。再構成ミオグロビンは、天然ミオグロビンに対して酸素親和性で77倍、一酸化炭素親和性で20倍の向上を示した。さらに、酸素結合能の低下の原因となる自動酸化の反応速度を測定したところ、天然ミオグロビンと比べ1/5倍に速度が低下していることが明らかとなった。これは合成した人工ヘム類縁体が鉄二価状態を安定化しているためであると考えられる。
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Research Products
(1 results)