Research Abstract |
学習不振の生徒に対して読解方略の指導を実施し,その成果を実践研究として投稿した。本研究では,文章の全体理解が困難な読み手に対して,読解プロセスの観点からのアセスメント評価を行なうことで,的確な方略指導を実施することの重要性を示した。 また,中学生約50名を対象とした介入実験を実施した。先行研究において,方略指導の効果は指摘されてきたものの,どのような介入方法が自発的な方略使用とそのコントロールに効果的か,という問題については検討されてこなかった。そこで,文章理解方略の使用を促進するためのプログラムとして,直接的に方略を教授される条件と教師の方略使用分析を行なう条件を比較検討した。その結果,両条件において方略使用の増加が見られ,特に,自己の理解をモニタリングする方略の使用の自発的なコントロールは,教師の方略使用を分析する条件において向上した。本研究の成果は,平成18年度の日本教育心理学会第48回総会において発表する予定である。 さらに,書きこみの質的な分析を通して,方略使用の学年差を検討し,文章の全体構造が不明確なテキストの読解時に方略使用に学年差が見られることを見出した。これは,学年が上の読み手が,文章構造に応じた方略使用ができるのに対して,学年が下の読み手は,文章構造が困難になると方略の質を維持することが困難になることを示唆すると考えられた。本研究の成果は,「読書科学」に投稿し,修正採択の通知を受けている。また,本年度は,読解方略使用メカニズム検討のため,質問紙実験の改訂作業,および,行動指標として眼球運動測定を用いた実験の準備(機材の購入・材料の作成)も行なった。課題要因として文章構造と課題負荷をとりあげ,読み手の要因としてワーキングメモリ容量とモニタリングスキルに注目することで,先行研究における知見をより詳細に明らかにするものである。
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