2006 Fiscal Year Annual Research Report
褐レン石地質温度・圧力計の開発と希土類元素の地球内部循環メカニズムの解明
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05J07346
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
星野 美保子 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 褐レン石 / 希土類元素 / マンガン / Sr-Nd同位体 / 化学組成 / 日本列島 |
Research Abstract |
褐レン石は、一般的に化学組成式は(Ca, Ce)_2(Al, Fe^<2+>,Fe^<3+>)_3(Si_3O_<12>)(OH)として表現され、数種類の希土類元素(REE)や放射性元素(U, Th)を濃集することが特徴である。また、褐レン石は花簡岩類、閃長岩、スカルンなどのさまざまな岩石の副成分鉱物として産出する重要な副成分鉱物である。そのため、希土類元素(REE)の地球内部での挙動や、母岩の生成環境を解明する上で、非常に貴重な情報を多く含んでいる。そこで、本研究の目的は、EPMAによる正確な化学組成、ICP-MSによる微量元素組成と固体質量分析装置によるSr-Nd同位体組成、年代決定に基づいて、日本列島以外の大陸地域に産出する褐レン石と比較することから、日本列島産褐レン石の特徴と起源を明らかにすることである。 日本列島に産出する花崗岩質岩石を網羅するために、昨年度より研究地域を増やし、さらに、日本列島の褐レン石の特徴を明らかにするために、今年度は中国(華南)やカナダ(Tanco)、オーストラリア(Lachlan Fold Belt)などの代表的な花崗岩中の褐レン石に対しても同様の分析を行った。Hoshino et al.(2006)により、日本列島の40地域に産出する褐レン石のEPMAによる精密な化学分析の結果、日本列島産褐レン石は、Mn-rich(2wt.%以上)とMn-poor(2wt.%以下)タイプに分けられることが判明した。この2つのタイプは、Mn^<2+>+(MREE, HREE)^<3+>[Mn-rich]⇔Ca^<2+>+LREE^<3+>[Mn-poor]という複合置換によって特徴付けられる。そのため、これらは、REEのコンドライトパターンからも区別され、それぞれ特有なREE分配を保持する。Mn-richとMn-poorの褐レン石の希土類元素パターンは、それぞれマグマ起源と熱水起源の岩石中のものに対応する。また、形成年代の古い大陸地域に産出する褐レン石は、すべてMn-poorタイプであり、Mn-richとMn-poorタイプの両方が産出するのは、日本列島の褐レン石の特徴である。さらに、本研究の褐レン石(Mn-rich:25サンプル、Mn-poor:15サンプル)のSr-Nd同位体比を測定した結果、^<87>Sr/^<86>Srと^<143>Nd/^<144>Nd同位体比の間には、負の相関関係があることが判明した。この傾向は、褐レン石の母岩であるイルメナイト系列と磁鉄鉱系列花簡岩の同位体比の傾向と一致しており、このことから褐レン石を形成したマグマは、Mn-richタイプがイルメナイト系列花南岩質マグマ、Mn-poorが磁鉄鉱系列花廟岩質マグマであることが明らかとなった。イルメナイト系列花崗岩は、比較的浅い地殻から生成されたマグマを起源物質とし、磁鉄鉱系列は、深所の苦鉄質物質の部分溶融により生成されたマグマを起源物質としていることから、熱水起源であるMn-richとマグマ起源であるMn-poorの褐レン石の希土類元素パターンや他の微量元素の特徴と整合的である。また、形成年代の古い大陸地域の花崗岩質岩石中の褐レン石のSr-Nd同位体分析の結果、イルメナイト系列と磁鉄鉱系列花崗岩の間の負の相関は同様だが、同位体値が日本列島のものに比べかなり低い位置にプロットされる。これは、大陸地域と日本列島の花崗岩を形成したマグマが全く異なることを示唆する。さまざまな岩石に普遍的に含まれる代表的な希土類元素鉱物である褐レン石の希土類元素濃度や同位体組成が日本列島と大陸地殻に産出するものの間で全く異なることから、それらの間で希土類元素の循環メカニズムに違いがあることが考えられる。
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Research Products
(1 results)