Research Abstract |
ボリュームデータから,等値面を3角形パッチの集合として近似的に抽出する手法は,医用CTデータを対象とする場合には,胃腸や気管支等の管腔形状を持つ臓器や骨格の形状解析や可視化等に有用である.医用CTデータ等の大規模なボリュームデータを扱い,閾値の変化に伴う等値面の形状変化をリアルタイムに観察するような場合には,等値面生成処理の高速化が求められる.本研究は面心立方(FCC : Face-Centered Cubic)格子上のボリュームデータからの高品質なパッチモデリング手法の実現を目指すものであり,本年度は主にその高速化手法について検討した. 等値面生成処理は処理の高速化の観点から,(1)ボリュームデータ中の境界セル探索,(2)等値面パッチの各頂点の座標・法線ベクトル計算,の2つの処理に大きく分けられる.(1)は,ある閾値が与えられたとき,ボリュームデータ中の全てのセル(分割領域)の集合から,境界セル(等値面を生成する必要のある分割領域)の集合を抽出する処理である.等値面は空間中の閉曲面群であることから,一般的にセルの総数に対する境界セル数の割合は極端に小さくなる場合が多い.そのため,(1)は(2)と比較して,全体の処理の高速化に対する寄与がより高い.本手法ではこれに対して,Interval-tree(区間木)と呼ばれるデータ構造を用いて,各セルをセルの頂点が持つ値の最大値と最小値からなる区間とみなし,与えられた閾値が含まれる区間を探索する問題に帰着させることにより高速化を図った.(2)に対しては,境界セルと等値面の交差のパターンに対応した頂点計算のためのテーブルを予め用意しておく手法と,セルの各頂点位置における法線ベクトルを前処理として計算し,保持しておく手法を用いた.(1),(2)に共通して,高速化を行う場合に様々なデータ構造を用いるため,それらを保持するための付加的なメモリコストが余計にかかる.このことから,計算コストとメモリコストはトレードオフの関係にあり,高速化を考える場合には両コストの増減のバランスを考慮する必要がある.この問題に対して,FCCボリュームデータを効率的にメモリ上に配置する手法を検討し,Interval-treeの使用に伴う付加的なメモリコストを最小現に抑えることを可能とした. メタボールによって生成したFCCボリュームデータと面心立方格子上に再標本化された医用CTデータの2つのボリュームデータを対象とし,閾値を連続的に変化させながら等値面生成を繰り返す実験を行い,Interval-treeを使用する場合と使用しない場合での全体の等値面生成時間を比較することにより,本手法の有効性を確認した.
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