2006 Fiscal Year Annual Research Report
『源氏物語』と一条朝文人の諸作品にみる漢詩文受容の様相について
Project/Area Number |
05J07884
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金丸 由美 (長瀬 由美) 明治大学, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 『白氏文集』 / 平安朝漢文学 / 『源氏物語』 / 諷論詩 / 策林 / 慶滋保胤 / 一条朝 / 『本朝麗藻』 |
Research Abstract |
本年度の研究では、『源氏物語』の創作された一条朝前後の漢詩文作品における、白居易諷諭詩受容の様相の解明を、中心的な課題として取り組んだ。『源氏物語』には、白居易の詩文集『白氏文集』所収の諷論詩群から多くの引用がなされている。これに関して従来は、漢詩文においてさえ諷論詩の享受の形跡が殆どみられない平安朝文学の中にあって『源氏物語』作者に極めて独自な特徴であるとされてきた。そうした通説を改めて検証するべく今年度を通して、平安中期一条朝前後の漢詩文作品のうち、『源氏物語』作者の父藤原為時が属していた文学圏の重要な人物である、具平親王と慶滋保胤の作品の分析・出典調査を進めた。その結果『本朝麗藻』所収の具平親王詩について、従来指摘されていなかった白居易諷論詩の典拠のあることを明らかにし、又慶滋保胤の草した詔の文面が、内容的に諷諭詩と密接な関わりを持つ白居易の散文「策林」を典拠とする表現を持ち、発想の脈絡においても大きな影響が認められること論証した。そして『源氏物語』において特異であるとされていた、白居易諷論詩群に対する深い理解と受容というものが、決してこの時代において孤立した現象だったのではなく、同時代のなかで、作者紫式部にとって最も近しい男性文人達の文学圏のあり方と密接に連動した傾向であることを明らかにした。 これに加えて、平安初期勅撰三漢詩集の時代から平安中期に至る文学観の変遷について、一条朝文人達から文学上の先達として仰がれ、詩文が享受されていた菅原道真の文学観を軸としつつ、『白氏文剣のもたらした文学観の影響との関わりにおいて、分析・考察を行い、そのうえで、『源氏物語』の菅原道真詩引用の態度を検証した。
|
Research Products
(1 results)