2005 Fiscal Year Annual Research Report
『源氏物語』と一条朝文人の諸作品にみる漢詩文受容の様相について
Project/Area Number |
05J07884
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金丸 由美 (長瀬 由美) 明治大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 源氏物語 / 紫式部集 / 白氏文集 / 唐代伝奇 / 中国文学史 / 漢籍受容 / 儒教 / 虚構の方法 |
Research Abstract |
今年度の研究の中心をなしたのは、論文「『源氏物語』と中国文学史との交錯-不可知なるものへの語りの方法-」としてまとめた研究である。これは、『紫式部集』において、『源氏物語』作者の超自然現象(=物の怪)に対する儒教的な合理的思考態度が認められる一方で、虚構の物語である『源氏物語』では、超自然現象を積極的自覚的に取り込んでゆく創作態度がみられるという、日本古典文学史にあっては特異な『源氏物語』作者の合理精神と虚構の方法への自覚という問題について、中国文学との関わりにおいて分析し論じたものである。具体的には、『源氏物語』に最も多く引用される『白氏文集』中の諷諭詩群・「長恨歌」・「記異」の作品と、平安朝文人達に受容され影響を与えた唐代伝奇小説とを軸として、私の研究の目的である『源氏物語』及び一条朝文人の諸作品の漢籍受容の様相の一端を明らかにしつつ、超自然現象を語る上での『源氏物語』と『紫式部集』の態度を、漢籍を通し『源氏物語』作者に受け止められた、古代儒教の持つ合理精神と、中国文学史上において六朝志怪を経て唐代伝奇小説に結実した自覚的な虚構の方法、との連関において考察した。唐代伝奇小説の担い手は儒教を奉ずる士大夫であったが、この研究を通して、その古代儒教における合理と非合理の問題と、中国文学史上でのフィクションに対する自覚の高まりとを、白居易ら中唐の文人達と唐代伝奇及び「長恨歌」という具体的な人と作品において確認し、それらを受容した『源氏物語』という作品の世界生成における、虚構と真実のダイナミズムの解明へと展開することが出来た。 このほか、本年度の研究計画のひとつであった『源氏物語』の六朝文学受容の調査研究の作業を進め、古注釈の指摘する『文選』『玉台新詠』引用箇所の妥当性の検証等を行っている。
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Research Products
(1 results)