2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10950
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 悠介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 能楽 / 金春禅竹 |
Research Abstract |
金春禅竹の能楽論の背景を明らかにする上で、禅竹の信仰的側面を中心に検討してきたが、特に、猿楽の芸能神としての翁に対する信仰や、それと密接に結びついている荒神信仰の実態、その歴史的展開について、研究を進めることができた。世阿弥は『花伝』第四神儀で猿楽の祖である秦河勝は「大荒大明神」になったとするが、金春禅竹は芸能神としての翁に対する信仰と不可分の形で荒神信仰を持っており、禅竹の能楽論『明宿集』は荒神を軸にして整理できる部分がある。荒神は日本で成立した神仏習合的な神格だが、これまで中世における荒神信仰の実態については不明な部分が多く、本研究では、荒神に関係する偽経・修法書・縁起・説話などを収集して分析を進めた。特に、叡山文庫や高野山大学図書館に所蔵される『荒神縁起』というテクストを分析し、これを鎌倉後期に荒神に関する縁起や教説を集成して成立したものと位置づけた上で、荒神に関する教説が善悪二相一如論などと関わりつつ、猿楽の翁信仰や秦河勝伝承に大きな影響を与えていることを明らかにした。そして、荒神が猿楽の芸能神とされるに至るまでの道筋として、勝尾寺周辺で信仰が発生して修験の中で広がり、経典注釈学の中で仏教体系の中に深く組み込まれたと考え、その教説を禅竹能楽論との関係で考察した。 また、禅竹の「六輪一露説」についても細部を検討し、加注した東大寺戒壇院の志玉という華厳学者の学問との関係などもふまえつつ、典拠の解明をすすめた。「六輪一露説」という能楽論は、中国・日本の華厳学の中で議論されてきた法界と心をめぐる観念を一つの基礎にしつつ、能楽の生成を説明する体系として構成されていることなどを明らかにしている。
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Research Products
(3 results)