2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11109
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊部 昌宏 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超対称性理論 / 暗黒物質 / 元素合成 / 物質反物質非対称性 |
Research Abstract |
超対称性は標準理論を超えた理論を考察する際重要な働きをすると期待されています。特に、超対称性が実現しているエネルギースケールが電弱統一理論のエネルギースケールに近い模型は、電弱のスケールの理解の面、及び、大統一理論の可能性などから多いに期待されています。 しかしながら、超対称性を持つように拡張された標準理論には、gravitinoと呼ばれる重力子の超対称対が存在し、初期宇宙に適切なモデルを考察する際さまざまな問題を引き起こします。特に、初期宇宙の高温期に生成されると期待されるgravitinoは、宇宙の元素合成時期に崩壊すると、観測されている元素の存在比と矛盾してしまいます。 私は、この問題を避けるために、非常に重いgravitinoの可能性について注目しました(文献2,3)。このような場合、gravitinoが初期宇宙の元素合成期よりも前に崩壊するために上の問題がなくなります。 しかし、一般にgravitinoが重い場合、他の標準理論に含まれている粒子の超対称対も重くなることが期待され、超対称性による電弱スケールの説明が困難になります。ところが、ある種の共形場理論においては、gravitinoに比べて他の標準理論に含まれている粒子の超対称対がずっと軽くなる可能性が指摘されて来ました。そこで私は次項の論文2,3において、非常に単純な模型で実際に他の標準理論に含まれている粒子の超対称対がgravitinoより十分軽く出来ることを示しました。これらの研究を通じて、重いgravitinoを含む超対称標準模型が十分可能であることを示すことが出来ました。 また、論文1においては非常に軽く安定なgravitinoの可能性について考察しました。質量が16eVより軽いgravitinoは、宇宙論で問題を起こさないことは指摘されていましたが、実際にそのように軽いgravitinoを実現した模型は殆ど有りませんでした。そこで私は、特殊な模型を用いることで実際に軽い質量が可能な模型を提示しました。さらに、その模型には非常に特異な暗黒物質の候補が含まれていることも示しました。この暗黒物質は、将来の宇宙のガンマ線観測などから検証可能であり今後の実験に期待しています。
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Research Products
(3 results)