2005 Fiscal Year Annual Research Report
単結晶エピタキシャル薄膜を用いた強相関遷移金属酸化物の光電子分光法による研究
Project/Area Number |
05J11210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和達 大樹 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光電子分光 / X線吸収分光 / 薄膜 / レーザーMBE法 / バンド計算 |
Research Abstract |
今年度は、主にペロブスカイト型Mn酸化物La_<1-x>Sr_xMnO_3,Nd_<1-x>Sr_xMnO_3,Pr_<1-x>Ca_xMnO_3の単結晶薄膜をレーザーMBE法で作製し、その光電子分光、X線吸収分光を行った。これらの物質は電子状態が格子と強く結合しているため、薄膜のような基板からの応力を受けた状態での電子状態は非常に興味深い。基板からの応力が電子状態に与える影響という観点より研究を進めた。La_<1-x>Sr_xMnO_3薄膜に対しては、特にX線吸収における線二色性に注目した。基板からの応力によって軌道占有状態が変化し、線二色性が表れる様子が明確に観測された。Nd_<1-x>Sr_xMnO_3,Pr_<1-x>Ca_xMnO_3薄膜に対しては、基板からの応力によってこれらの物質のバルク試料で見られる電荷整列が抑制される様子を光電子分光で観測した。電荷整列相で見られる化学ポテンシャルシフトの抑制などが薄膜試料で観測されず、基板からの応力によって電荷整列が抑制される様子が観測された。 また、これらの3次元の電子構造を持つ物質の角度分解光電子分光(ARPES)の解析手法としてタイトバインディングモデルを用いたバンド計算を行い、La_<1-x>Sr_xMnO_3,La_<1-x>Sr_xFeO_3といった物質のARPESの系統的な解析を行った。 さらに、ペロブスカイト型Ni酸化物の1つとして、Bi_<1-x>La_xNiO_3のバルク多結晶試料の光電子分光、X線吸収分光を行った。この物質はAサイトであるBiの電荷整列が起き、Biエンド側では絶縁体となる点で興味深い。光電子分光、X線吸収分光より、Laドープに伴う金属絶縁体転移ではBiの価数はほとんど変化せず、Niサイトにホールが入ると言う描像が明らかになった。この系の金属絶縁体転移も格子と強く結合しているため、薄膜にした場合の電子状態には大変興味が持たれ、現在薄膜化を目指している途上である。
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Research Products
(2 results)