2005 Fiscal Year Annual Research Report
トンボの種多様性決定メカニズムの解明と地域の種多様性指標としての役割の評価
Project/Area Number |
05J11543
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角谷 拓 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生物多様性 / 健全性 / 流域管理 / モニタリング / 景観構造 / 水生昆虫 / 生活史 / 環境選好性 |
Research Abstract |
喪失の著しい湿性生態系の健全性を持続的に維持するためには、水の循環サイクルを包括する流域スケールでの管理・モニタリングが欠かせない。本研究ではトンボ目昆虫を対象に、新たに作られた水域に飛来してくる種から、周囲の種供給ポテンシャル(周囲環境がどのような種をどのくらい供給する力を持っているか)の推定を可能にするために、トンボのハビタット選好性や、池の周囲の景観構造の影響を、個体群および群集生態学両方の視点から明らかにすることを目的とする。 本年度は、茨城県霞ヶ浦流域に位置する54ケ所の人工的な一時的水域において、成虫のトンボの調査を実施し、2003年度にすでに行った同様の調査の結果とあわせて、(1)トンボの種多様性に、池の植生構造がどのような影響を持っているかを検討した。その結果、トンボの種数は、池の植被率が中程度のところで最大になることが明らかになった。また、池が樹木などで覆われてしまうと、トンボの種数は減少することが明らかになった。このことは、池に飛来するトンボの種多様性を最大化するには、池を、明るく、適度に植生が茂った状態に管理する必要があることを示している。 さらに、(2)池の空間配置や樹林の分布など池の周囲の景観構造の影響を受けやすいのはどのような生活史特性をもった種であるかを検討した結果、池から羽化した後、繁殖を始めるまでの期間(前生殖期間)が長い生活史戦略をもつ種が、期間が短い種に比べて、池の空間配置や池の周囲の樹林地の分布に強く影響を受けることが明らかになった。これは、陸上での滞在期間が長くなることで、陸上環境の質により強く影響をうけるためと考えられた。したがって、前生殖期間が長い生活史をもつ種は池の周囲の環境の質をモニタリングする対象として適している可能性があることを示唆された。 なお、(1)の結果は現在論文を執筆中であり、(2)の結果は国際誌に投稿中である。
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