2006 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡散逸系としての粉体系における自己組織化の研究
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05J11808
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辰己 創一 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 粉体 / 統計力学 / ガラス転移 |
Research Abstract |
粉体の構成方程式を記述するにあたり、動力学への深い理解は必要不可欠である。前年度の研究において、粉体ガスの統計性を理解すべく、実験的な観点から擬2次元セルにおける一様に励起された定常ガス系、及び定常ガス系を初期状態として一切の系を自由に発展させる、冷却ガス系の理論との整合性を探った。その結果、定常粉体ガスの統計的性質が外部加振強度に依存して変化すること、冷却ガス系の結果が理論と整合しない事を得た。しかし、外部加振強度依存の本質や、冷却ガス系の不一致については依然不明であった。 本年度の研究において、上記2点の疑問について、前者についてはほぼ完全に、後者については50%程度答えを出す事が出来た。外部加振強度依存については、系の励起に要する時間スケールτ_1と、系自身の持つ平均衝突時間τ_2との兼ね合いを反映しており、励起が十分=熱的、であるか否かを示している。一方冷却ガス系の結果については、本年度の研究を通じ、実験系のセットアップに依存することがわかった。セットアップの違いは、"擬"2次元セルの残された1次元からのエネルギーの転化の有無を反映しており、系に熱的な力が残っているかどうかを示していると考えられる。総じて、粉体ガス系において、"熱"をどのように取り扱うか、という指針を示すことに成功した。 以上の研究は概ね充填率の低い領域における粉体の性質であったが、本年度後半から、充填率の高い領域における粉体の動力学の研究も進めている。一定以上充填率を高めた粉体系は、その性質を大きく変える。それは粉体の静力学の研究でも実証されていることではあるが、動力学においては未だ不明である。その詳細については、現在実験を継続中であるが、静力学において観察される臨界充填率よりもはるかに低い充填率において、特異な現象を示唆する結果を得つつあり、もしこれが事実であれば非常に重要な知見となると考えられる。
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Research Products
(1 results)