2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J12056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋本 千央 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Y染色体 / 核内受容体 / 転写 |
Research Abstract |
今年度はY染色体遺伝子TSPYを中心に研究を行い、アンドロゲンレセプター(AR)転写活性化能の制御能についての分子機能解析を行った。 精巣癌由来NEC8細胞、およびARが高発現しアンドロゲン依存性癌として知られる前立腺癌由来LNCaP細胞を用いて内在性ARとTSPYの結合を検討した。FLAGタグ融合TSPYを安定発現させたNEC8細胞(TSPYstable細胞と記す)およびLNCaP細胞において、TSPYとARはリガンドであるDHT非依存的に結合を示した。次に、GST-pulldown法により、GSTタグ融合TSPYとARが直接結合することを示した。ERaおよびERbとの結合は見いだされなかった。 TSPYがARの転写活性化能を抑制することを前年までに見いだしていたため、TSPYのsiRNAによるARの転写活性化能への影響を解析した。その結果、TSPYstable細胞においてTSPYのノックダウンによりARの転写活性が回復した。LNCaP細胞における内在性のTSPYによるARの転写抑制も、TSPYのノックダウンにより回復した。 また、TSPYとARの細胞内局在を蛍光免疫染色法により解析した。ARはリガンドと結合し、核移行を示すことが知られており、実際にNEC8細胞内で同様の挙動を示した。それに対し、TSPYはDHTに依存せず細胞質に留まり、TSPYとARの共局在は細胞質においてのみ観察された。次にTSPYとARの細胞内結合を生化学的手法により検討した。DHT投与後、経時的に回収したTSPYstable細胞を細胞質画分および核抽出液画分に分画し、抗FLAG抗体で免疫沈降を行った。TSPYとARの相互作用は細胞質画分のみで見られことが明らかとなった。さらに、TSPYのノックダウンにより、TSPY結合ARが減少し、細胞質ARお減少と核内ARの割合の増加が見られた。 精巣癌由来NEC8細胞において、リガンド添加後の細胞増殖を検討した結果、NEC8細胞においてもアンドロゲン依存性の増殖亢進が見られることが明らかとなった。また、TSPYstable細胞ではそのアンドロゲン依存性増殖が抑制されることを見いだした。今後TSPYおよびARの発現量と精巣癌の悪性度に相関が見られる可能性を考え、臨床サンプルを用いた解析を試みている。
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