2005 Fiscal Year Annual Research Report
代謝シミュレーションモデルを用いた赤血球の新規生理機能の探索ならびにその手法開発
Project/Area Number |
05J50912
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木下 綾子 慶應義塾大学, 大学院・政策・メディア研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | システムバイオロジー / メタボローム解析 / 代謝シミュレーション / 赤血球 / 低酸素応答 / モデリング手法 |
Research Abstract |
低酸素状態にある赤血球が起こす代謝変動と、それによる赤血球細胞、臓器、生体への作用機序を知ることは、微小循環の低酸素応答を理解または制御する上で非常に重要であると考えられる。 低酸素下と高酸素下のヒト赤血球について、キャピラリー電気泳動/質量分析計(CE/MS)によるメタボローム(代謝物)一斉測定を行ったところ、低酸素で解糖系前半の代謝物質の著減と後半の代謝物質の上昇が観察された。更に、一酸化炭素(CO)を付加して人工的にヘモグロビンアロステリーを変化させた赤血球を用いた解析により、この代謝変動がヘモグロビンの型の違いによって惹起されていることを突き止めた。 これをもとに赤血球代謝の詳細なキネティックモデルによるシミュレーション解析を行った結果、ヘモグロビンの型の違いによって起こる、Band3膜タンパクへの結合を介した解糖系酵素(PFK、GAPDH、ALD)の活性制御を考慮することで、低酸素におけるメタボローム変動が再現されることがわかった。 シミュレーションモデルは更に、低酸素応答としての解糖系の活性化には、1)グルコース解糖経路の第一の反応であるヘキソキナーゼの活性上昇 2)Band3に結合していた解糖系酵素の遊離 の二つが関与していることを示唆した。前者は、長期的な解糖系活性の維持と2,3-ビスホスホグリセリン酸(DPG)の増加、後者は代謝物質プールの移動を利用した瞬間的なATP合成能の上昇に寄与している可能性が示された。
|
Research Products
(3 results)