1995 Fiscal Year Annual Research Report
民具調査からアプローチする西日本における牛馬耕の展開の史的研究
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06630064
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
河野 通明 神奈川大学, 経済学部, 教授 (00260985)
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Keywords | からすき(犂) / 牛馬耕 / 首木 / 鞍 / 四国の民具 / 揚水機 |
Research Abstract |
1.昨年度の2月:徳島県,3月:香川県の調査を受けて,5月:愛媛県,6月:高知県,7月:香川県,8月:私費で愛媛県,11月:香川県まで,四国一帯の博物館・歴史民俗資料館の収蔵庫の犂調査をおこなった。このデータは最終年度に刊行する予定である。また在来型の犂は香川県ではほとんどなく,愛媛県では残存がよいことが確認できた。これは庶民の明治の変革の受け止め方の違いの反映でもあろう。 2.犂を牛の鞍のみで引く岡山県や山口県で,首木を使わない代わりにφ5〜6cmの藁心首輪で牽引力の一部を牛の肩にかけるやり方をこれまで数例確認してきたが,今回は香川県で数例計測することができ,呼称がムナガエであることから,胸繋の進化したもので首木とは別系統のものであることが判明した。 3.愛媛県の中島町は山口県の周防大島と目と鼻の先であり,大島の牛の牽引法は首引き法で山口県の文化圏であることは過去に確認しているが,中島町は今回の聞取り調査で鞍による胴引き法で,愛媛県の文化圏あることが確認でき,鞍の寄贈も受けた。 4.高知県の犂は右反転と言われていることを確認できた。ただ境界線が県境・旧国境と一致するのかどの程度に出入りがあるのかは未確認である。また右反転地域の牽引法は胴引き法であり,山岡真十郎のいった戦国時代に南海から中国系の犂耕が伝来したとする説がなりたたないことは確認できた。 5.香川県下ではジュズクリと称する足踏み回転のバケットコンベア類,その改良型と思われるロザリオポンプ,足踏み碓方式の井戸ポンプなど,関西には見られない多様な灌漑揚水機が使われていたことが確認できた。この瀬戸内式気候地帯特有の揚水機の分布調査や開発時期の考察は今後の課題である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 河野通明: "「大野湊神社奉納雛形農具と加賀の馬耕」" 商経論叢. 31巻1号. 41-84 (1995)
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[Publications] 河野通明: "「“The Chinese Repository"所載清代の犂図について」" 歴史と民族. (発表予定).
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[Publications] 河野通明: "「香川県下の在来型揚水機」" 民具マンスリ-. (発表予定).
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[Publications] 河野通明: "西日本における在来型犂の調査報告書" (年度末に刊行予定),