Research Abstract |
水媒体不均一系原子移動ラジカル重合において,用いる金属触媒の水相への分配が重合に与える影響について,より詳細に検討するため,スチレンのミニエマルション重合における金属触媒の水相への分配が与える影響を,コンピュータシミュレーションと実験を詳細に比較した。その結果,ラジカルの発生速度と消失速度が同じになる定帯状態においては,金属触媒のいかなる分配係数においても生長ラジカル濃度は常に一定であるが,非定常状態では,水相への分配係数が高いほどラジカル濃度が高くなる,つまり重合速度が速くなることが明らかとなった。実際の実験系においても同様の結果が得られ,つまり,実際の実験系では非定常状態で重合が進行していることがわかる。さらに,重合速度,ラジカル濃度,制御の指標となるリビング性についてのシミュレーション結果は,実際の実験結果とほぼ一致していた。 ところで,従来の水媒体不均一系重合は均一系と比較し,モノマー/水間での内容物の分配やコンパートメンタリゼーション効果により,非常に複雑系となる。特に,非常に粒子径の小さい場合,コンパートメンタリゼーション効果が顕著に現れ,重合速度などのkineticsに多大な影響を与える。制御/リビングラジカル重合系においてもそれは同様に起こると予想される。そこでコンピュータシミュレーションにより,そのkineticsに関する詳細な検討を行った。その結果,粒子径が減少すると,別々の粒子内に存在するラジカルが停止反応を起こし得ないためラジカル濃度が増加し,重合速度は増加するが,さらに粒子径の小さいところでは,二分子間距離が非常に短く,休止反応速度が非常に速くなるため,ラジカル濃度が減少し,重合速度が減少する。また,粒子径の増減がそのリビング性に与える影響も明らかとした。
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