2006 Fiscal Year Annual Research Report
『宝性論』注釈文献群の研究、ロデンシェーラプ著『宝性論要義』校訂と英訳
Project/Area Number |
06J02445
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加納 和雄 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | インド・チベット仏教 / 文献研究 / 蔵語・梵語新出写本研究 / 如来蔵・仏性思想 / 『宝性論』 / 国際研究者交流 / 多国籍 |
Research Abstract |
本年度は6月から9月にかけて、『宝性論要義』の校訂と英訳を進めるために、David Jacksonハンブルグ大学教授のもとで研究に従事した。8月末ボンで開催された国際チベット学会では、『宝性論科文』についての研究成果を口頭発表した。同成果によって、これまで構造上不明な点を含んでいた『宝性論要義』の全体像をより明確にしえた。 9月に帰国した後は、『カダム全集』の研究に従事した。『カダム全集』は、12世紀前後の新出のチベット語古写本を収録した写本集成であり、このなかには『宝性論要義』の新発見写本が収録されている。この写本は、従来知られていた版本よりも遥かに古く、しかも写本伝統の系統が異なるため、主要課題である『宝性論要義』の校訂本を作成するにあたっては必要不可欠な資料である。『カダム全集』には『宝性論要義』の著者による別作品が8点収録されるが、特に本研究と密接に関連する『書簡・甘露の滴』に焦点をあてて、その校訂本を作成し、同成果を学術誌『高野山大学密教文化研究所紀要』に発表した。この成果によって『宝性論要義』著者の思想的基盤の一端を解明することに成功した。この成果を踏まえ、報告者は、2008年アトランタで開催予定の国際仏教学学術会議における『カダム全集』研究部会の主催者の一人に選定されたため、国内外の研究者を募り、部会草案を提出した。 以上の写本研究と並行し、京都大学人文科学研究所船山助教授のもとで漢文資料の研究に着手した。これによって五世紀周辺のインド仏教思想の痕跡を辿り、『宝性論』成立当時の思想背景の一端を解明しえた。 本年度は、上記の国際チベット学会以外に、国際密教学会(9月、於高野山大学)、印度学仏教学会(9月、於大正大学)、日本西蔵学会(10月、於早稲田大学)、密教学研究会学術大会(10月、於高野山大学)、印度思想史学会(12月、於京都大学)に参加し、学会の最新の動向に即した形で研究を進めることが出来た。
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Research Products
(1 results)